ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラーなど、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

インテグラル理論

「目撃者の自己」と「複雑系の自己」

ウィルバーのいう「目撃者としての自己」と、ここ何回か記事で取り上げてきた「複雑系としての自己」を対比させて示せないかと考えて以下のような図を描いてみた。 上図は「目撃者としての自己」(目撃者の自己)の広がりを私なりに示したものだ。I(個人の…

新たな認識は新たな世界を生成する~世界内認識の複雑系~

nagaalert.hatenablog.com フランシスコ・ヴァレラの『身体化された心』を参照し、2013年5月5日のこのブログで私はこう書いた。 すなわち、現実とは自己と世界の間で共創される複雑系であるということだ。私は今まで相互依存性を右下象限の性質であると何と…

リアリティは部分/全体であるホロンから構成されている

ホロンとは、アーサー・ケストラーが作った造語で、「ある文脈において全体であると同時に別の文脈で部分である単位のこと」を指します。 ケンウィルバー著「進化の構造Ⅰ」のp57にこう書かれています。 実在/現実(リアリティ)はモノあるいはプロセスか…

「経営マトリクス研究所」

姫路市においていた有限会社をこちら(大阪府茨木市)に移転登記し、ついでに商号も変えて、年初に再出発しようと先月からいろいろと考え抜いて、決めた社名が「経営マトリクス研究所」である。 「経営」はともかく、なぜ「マトリクス(orマトリックス)」な…

新しい価値体系への変革を促す

(本稿は「エスビューロー事務局長のブログ」に掲載したものですが、本ブログでも掲載させていただきます。) エスビューロー事務局長のブログ: 新しい価値体系への変革を促す 神谷美恵子氏の「生きがいについて」を内部勉強会のテキストに選んだ。美智子皇…

五蘊その4「行」―Mental Formations

自分のつくり出している「メンタル・フォーメイション」に気づく 五蘊の4番目は「行」です。英語ではMental Formationsと表現されています。まずは、Ayya Khemaによる「行」の解説です。(“Being Nobody, Going Nowhere”p122) (以下引用拙訳) さらにまた…

いのちの居場所に、いのちを使う

ひと月ほど前に「コペルニクスの鏡」を読んだ。 とてもいい本だ。 この本は清水博先生が被災地の人たちに向けたメッセージをこめて物語として書いた本だ。 子どもでも読めるように、喩え話の力を使おうと物語にしたのだという。 コペルニクスの鏡のことを省…

絶対肯定としての「トンパ・ニ」

ミンゲールの「今、ここを生きる:The Joy of Living」の 第4章 空―実在を超えた実在 のP80で「空」のことがこう説明されている。 心をただ休める時に経験する広々と開いた感覚を、仏教では「空」と呼んでいます。・・・「空」という言葉を「無」("the Void” o…

小児がん・脳腫瘍全国大会はインテグラル・シンキングを促すプロジェクト

鈴木規夫氏の著書「インテグラル・シンキング」の第3章は、「知性の成長段階」について書かれています。 ハーバード大学のザッカリー・スタインの研究にもとづいて、5つの段階が示されており、たいへん興味深く読ませていただきました。 第1段階は、AQAL…

ワークショップでの四象限の活用

昨日の小児がん喪失家族ワークショップは、子どもを喪失されてまだ半年程度の参加者の方が4名、2年経過した方が1人、4年の方が1名、10年前後のものがスタッフを入れて3人というメンバー構成で行われました。 私の役割はファシリテーター補佐といったところで…

インテグラル・コーチングに参加して

先週の木曜日に上京し、インテグラル・ジャパンの鈴木規夫氏の「インテグラル・コーチング」に参加しました。その場にいた全員の刺激を受けて、触発され、さまざまなものが自分の中に喚起されていましたが、今日になってほぼ整理できたように思います。 大変…

四象限で現状分析し、四視座でsolutionを評価する

先月下旬に発売された「インテグラル理論入門Ⅱ」(春秋社)には、従来の四象限に加えて四視座(quadrivia)が取り上げられています。四象限も四視座も座標のクロスする中心に円が描かれており、四象限では人の顔が、四視座では事象がその円に入って描かれて…

インテグラルとは「苦悩を乗り越えるのに役立つ知の体系」

玄侑宗久さんの現代語訳「般若心経」を読んでいて、観音さまは自分(の身体と心)というものがすべて「空」であることを見抜いて一切の苦厄から救われたのだという 照見五蘊皆空 度一切苦厄。 この解説をスタートとして、この数週間でいろいろなイメージが広…

「ネットでeクラス」が育む「私たち(We)」というスペース

毎日新聞のネット版である毎日JPに毎日教育eタウンというコーナーがあり、月に一回、小児がん経験者の学習コミュニティのことを投稿しています。本日更新されましたので下記にリンクしました。 http://www.v-schoolcity.net/ht/etown/voice_staff.html また…

心理社会的支援で見落とされるもの

いわゆる「小児がんの心理社会的支援」ということについて気がついたことがあります。たとえば患児に対するケアを考えた場合に、身体面の治療のみならず、心理面でのケア(メンタルケア)そして社会的な支援(ソーシャルサポート)を合わせて提供することで…

ゴスペル・クワイアの至高体験

「インテグラル理論と実践が自分にどう役立ったか」を考えていて、先週お会いしたhuman noteという団体の活動の源泉にマズローのいう「至高体験(perk experience)」があるのだという洞察は、ごく最近インテグラル理論が役立った事例の一つだとあらためて思…

AQAL、8つの姿

CORE INTEGRALから出ているDVD「Essential Integral」の中でPerspectives on AQALという項目があります。地図や枠組み、レンズとして説明されることの多いAQALですがここでは少なくても全部で8つの受け取り方があるよと言っています。国内でもAQALをさまざ…

Absorptive−Witnessingその2、主客転倒せよ!

前回の続きです。 アイデンティティの最も高いStageであるAbsorptive−Witnessing段階の特徴の二つ目は、「目撃認知へのアクセスの増加」(Increased Access to Witnessing Cognition)です。P153のこの節を読み、これと関連したP77の「認知の発達ライン:ポ…

Absorptive−Witnessingその1、焦点を移行する

MARK D.FORMANのa guide to integral psychotherapyという本からP150「Stage6:Absorptive−Witnessing:段階、病理、同一化の特徴」という節を見ています。 (以下抜粋拙訳) ウィルバーは著述を通じてある考えを強調してきました。それは社会的規範を超え…

フロー状態とAttention

前回のブログで自己同一性の発達ラインの最も高い段階としてAbsorptive-witnessing があることをみました。Witnessについては今まで何度も取り上げてきましたが、Absorptiveについて理解を深めようとあれこれ見ていくうちに「フロー(flow)」に行きつきまし…

不動、不変の視点、龍とわたし

「わたくし、すなわちNobody」とは2007年に46歳の若さで、がんで亡くなった池田晶子さんの著作をマネジメントしているNPO法人の団体名称です。すぐれた文芸作品に対して「わたくし、すなわちNobody賞」を授賞することもしています。 知っているNPO法人…

慣習的な葬儀が苦痛である理由

子どもを小児がんで亡くした母親を対象としたアンケートを整理していて、あらためて葬儀が大きなストレスになっていることを認識しました。葬儀だけでなく49日までの法要であったり、納骨のことであったり、一連の弔いの行事全般が母親を中心とする家族に…

根源的恐れを明け渡すレベル1

前回のブログの続きです。インテグラル理論の「タイプ」のひとつであるエニアグラムを考察しています。 エニアグラムのそれぞれのタイプには、健全なレベル、通常のレベル、不健全なレベルという1から9のレベルがあります(レベル1が最高、レベル9が最低…

性格とは心の鎧、とらわれず乗りこなす

京都でのケンウィルバー勉強会の5回目に「タイプ」の学習としてエニアグラムが取り上げられる予定になっていることから、「エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ」(ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン著 角川書店)を読みました。 これがなかなかに…

「納得がいかないこと」と、「非合理的」の前/超

「納得がいかない」ことが時として起こります。この「納得がいかない」こととは何でしょうか? 私たちの多くは合理的に物事を理解できるように教育を受けてきています(基本的にオレンジの教育を受けているといえます)。投げたボールが落ちてくるのは万有引…

インテグラル理論という共通言語

先日、2日連続でインテグラル理論の集まりに参加しました。私にとって出会って間もない人たちとインテグラル理論について話し合うことは初めての経験でした。 しかし、とても刺激的だったのです。時間があればまだまだ内容は深まって行きそうでした。ひとり…

The Power Of Now は水平的Enlightenment

Eckhart Tolleは私も好きで過去に何回かこのブログでも取り上げています。その著作「The Power Of Now」や「Stillness Speaks」そして「A New Earth」などはウィルバー哲学を理解する上で大変役に立ちました。そうしたこともあって以前からウィルバー(ある…

Unique Selfのために「葛藤を持ち寄る」

今回はMoralのラインを取り上げたいと思います。まず慣習というものを一つの基準としてそれに合わせることのできる前の段階、慣習に合わせる段階、そして慣習を超えていく段階に大きく分類したコールバーグによる道徳性発達段階がよく知られています。そして…

実存的能力

実存的な能力については、ガードナーのいう多重知性の9番目の知能の候補であるExistential Intelligenceのことを4月14日のブログで取り上げました。 そして、先月末に出版された「インテグラル理論入門Ⅰウィルバーの意識論」(春秋社)の「第7章 インテ…

Emotionalのラインはシャドウ・モジュールで伸ばす

今回はEQを取り上げようとして、ゴールマンの”Emotional intelligence”邦訳「EQ こころの知能指数」を購入し、その他にもウィキペディアやEQジャパンのウェブサイトなどに目を通しました。前回のInterpersonal知性で取り上げたセルマンのような明確な発達…