ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

エックハルト・トール

目撃者と火の鳥のまなざし

2000年以降の人生で、私がもっとも救われたのは、ウィルバーの「目撃者」(Witness)である。この週末にも、エゴの情動を揺さぶる穏やかならぬ小さな出来事があった。そこで枕元の『存在することのシンプルな感覚』第1章「目撃者」を再読した(何百回目かの再…

from 原初の回避 to 全景画(Total Painting)

「原初の回避」については、『インテグラル理論を体感する Integral Meditation』(ケン・ウィルバー著)にこうある。 けれどもよく観察してみると、私たちはあまりにも多くの場合、何らかのものを「見たくない」と感じています。… ちょっとした不快な身体感覚…

在り来たりな日常の中に微細をみつける

2009年以来、その丑年の元日に書初め(※1)して以来、今日までの最大の収穫は「微細」を習得しえたことだ、と気づいた。 近年は瞑想をしていない日中でも意図すれば微細に入ることができる。 今年は、微細を一日3回、体験するように努めてみよう! 昨日は卓球…

正しく怖れよ!有益な思考と無益な妄想

思考がお化けをつくり出していないか? それは、あらぬ妄想だ。 言葉と記憶によりサピエンスは食物連鎖の頂点にたったが、 今ここに危機はないにも関わらす、心は闘争してしまう。 サピエンスの背負った苦悩である。 コロナから「二本の矢」を受けてはならな…

記憶に残る3つのブログ記事

このブログを本格的に書き始めたのは、2009年の元日からです。 今年の年末で10年を迎えるということで、自分なりに記憶に残るブログ記事、自分にとって大きな変化につながったブログ記事はどれであったかを考えました。 今回はこの10年間の前半、2…

「見せかけの不運」から「高次の秩序」へ

3月6日のブログで『見せかけの不運』について書いた。 ある出来事を、その出来事単独で、その時の自分にとって好ましい事、好ましからざる事で分けて、あれは良い出来事、これは悪い出来事、前回は幸運な出来事、今回は不運な出来事というように判断する。人…

状況とシンクロする、全体に整合する

マイケル・キャロルの『THE MINDFUL LEADER』を読んでいて、特に注目したのはPART3に出てくる「環境とシンクロする」あるいは「状況とシンクロする」という言葉です。 言うまでもなくユングの唱えたシンクロニシティの意味合いをも含んだ言葉であると考えら…

概念としての自己と脱同一化する時間をもつ

最近、ルパート・スパイラの「プレゼンス」という本をとても興味深く読んでいます。 Presenceは「現存」と訳されています。ウィルバーの著書の多くを訳された松永太郎さんはPresenceを「現前」と訳しました。文脈によって「いまここ」とも表現されていました…

非二元への扉、世界とぴったり重なっている私

まず、ウィルバーの「存在することのシンプルな感覚」の訳者あとがきで、松永太郎さんが書かれた文章を抜粋したいと思います。 (以下引用)この非二元への開眼は、恐ろしくシンプルで、誰にでも開かれている。徹底的に「平等」である。修行したり、勉強した…

どれほどそれを受け流せるのか

最近わたくしごとに関するさまざまな物事が大きく動いているおかげで、外部の関係者とのあいだで葛藤が生じる。 思いも寄らぬ一撃であったり、思わぬ人からの不意打ちのような予期せぬ形でそれはやってくる。 このことをどう考えればいいのだろうか?と昨日…

思考から莫大な量の意識を解放する

エックハルト・トールのいう5つのポータルとは、Now、Surrender「明け渡し」、Space、Silence、Inner Bodyであることは前に取り上げた。 5つのポータル - ウィルバー哲学に思う しかし、The Power of Nowをよく読んでみるとcessation of thinking「思考を停…

アイデンティティを強めようとする傾向に気づく

20歳代の後半だったように思う。自分はいったい何がしたいのか。何が生きがいなのか? どんな時に仕事にやりがいを感じるのだろうか?とよく考えたことがあった。 そのときの結論はかなり長い間、私の中で疑問視されることなくあった。 その時に得た結論は、…

曇りなき眼で見つける青い鳥

前回のブログで「言葉で言い表せないものの価値を見出す」と書いた。そしていろいろと思いを巡らせるうちにやっぱり「青い鳥」ではないのかとの思いが強くなり、メーテルリンクの「青い鳥」(新潮文庫)を購入して読んでみた。 ご存じの通り、クリスマスイブ…

ことば、そして「関係づける能力」の功罪

7月14日の「マインドフルネスで包んだ後にくる洞察」に対して、ACTと似ていますね、とコメントをくださった方があった。 ACTとはアクセプタンス・コミットメント・セラピーの略で「第三世代の認知行動療法」と呼ばれているとのこと、早速、”Get Out of Yo…

五蘊その2「受」―Feeling

今回は五蘊の二つ目であるfeeling について、Ayya Khemaの“Being Nobody, Going Nowhere”で解説されている部分と、Thich Nhat Hanh が“The heart of the Buddha’s Teaching”で解説されている部分をあわせて見ていきたいと思います。 (以下引用拙訳) 五蘊の…

Meというスーツを脱いで「背景にある感覚」に気づく

昨日から今日にかけて2つの英文ブログ(エリック・トンプソンとエックハルト・トールの最新記事)を読んだ。「いい内容だ」という印象と、互いに共通する点もあるなあと感じ入り、日本語訳を残したい思いもあって、気づきのあったことを含め、以下に書かせて…

Let It Beによって全体性に整合する

先日久しぶりにカラオケに行った。行くと必ず歌うのがビートルズの曲であるが、今回はLet It Beを歌った。 これはポールの曲でありキーがやや高いので、2♭下げて歌った。それはともかく…。 エックハルト・トールを読んで、重要なポイントを3つあげるとした…

なぜ、書道は、書「道」か?

昨夜、眠りにつく前に 書道がなぜ書「道」なのか? なぜ「道」がつくのかが分かった!と思った。 私は、道がつくものはタオへとつながるもの。 究極への道。タオへの道。 であると、もともと考えていた。 ラストサムライで剣の極意としてNo mindを学ぶシーン…

恐れと欠乏の感覚

前回の勉強会でビッグマインド・プロセスを受けている時、「プロテクターとコントローラーのいずれにも、根底に恐れが潜んでいるな」という感じを強くもちました。 このことをあらためて考えてみると、エニアグラムでいうところの「根源的恐れ」とエックハル…

マインドとの脱同一化と、絶対否定

エックハルト・トールがくどいほど繰り返しいっていることのひとつは「マインドとの脱同一化」である。 昨日ちょっとした心理的緊張状況があり、そのことをエックハルト・モデルを使って振り返ってみた。 対人関係の場面で先方が発したメッセージに対して、…

Anxiety Gap

エックハルト・トールはThe Power of Nowの中でAnxiety Gapについて述べている。簡単にいうと、身体は今ここにあるのにアタマ(Mind)は過去、あるいは未来のことに、気をとられているという状態だ。 この身体とアタマの不一致、あるいはギャップをAnxiety G…

5つのポータル

Dalal はPortals into Enlightenment という節で、エックハルトの提示する5つのポータルを取り上げています。(以下引用) 私が特に有用性を見出したエックハルトの教えのユニークな側面は、彼が直接にそして即座に(特定のテクニックの実践を行うことなく)…

No Problems in the Nowの2つの意味

前回の続き、P15 No Problems in the Nowからの以下引用です。 エックハルトが繰り返す啓示的な教えは、今この瞬間には(in the Now)どんな問題も存在しないということだ。 多くの人をよく困惑させるこの教えは、Nowの異なる二つの意味に照らして理解される…

心の静寂と思考の不在によって特徴づけられる「意識のphenomenon」

“Eckhart Tolle & Sri Aurobindo”からトーレのいうEgoic Selfの7つの特徴の最後であるPerceiving through the Veil of Mindを今回は取り上げます。(以下引用) Perceiving through the Veil of Mind 心のベールを通して知覚する このメンタルノイズについての…

ペインボディに餌をやらない、ただしシャドウに留意して

“Eckhart Tolle & Sri Aurobindo”からトーレ独特の表現でもある「ペインボディ」について解説された記述がありましたので紹介させて頂きます。(以下引用) The Pain Body (P18〜) 私が最も価値があることを見出したエックハルトの心理学的洞察のいくつか…

メンタルノイズを目撃する

“Eckhart Tolle & Sri Aurobindo”からトーレのいうEgoic Selfの特徴を見てきています。 Egoic Selfの特徴として上げられている項目は7つあります。 Fear―Insecurity Resistance―Complaining (既述) Needing Ever More―Desire(既述) Looking to the Next …

Waitingに気づく、そして存在することのシンプルな感覚

引き続きエックハルト・トーレのいうThe Egoic SelfをDalal博士の解説でみて行きます。 Looking to the Next Moment―Waiting いつもwantingとneedingの状態にある必然の結果として、常に未来に生きる傾向をもたらす。 人は、今この瞬間に喜びや満足を見出す…

すでにそうであることへ「抵抗する」傾向に気づく

A.S.Dalal博士はシュリ・オーロビンド研究の第一人者です。彼のA GREATER PSYCHOLOGYという著書ではケン・ウィルバーが巻頭言を書いたりしています。彼の著書でエックハルト・トーレとシュリ・オーロビンドの教えを対比させて書かれた本があります。最近、そ…

慢性的な欠乏の感覚とrestlessnessに気づく

前回の続きでエックハルト・トーレのいうThe Egoic SelfをDalal博士の解説でみて行きます。 いつでももっと欲すること―欲望 エックハルトの話すエゴ的自己のもうひとつの主要な特徴は、慢性的な欠乏の感覚(incurable sense of lack)、不十分な、不完全な感…

心理療法と相互補完的なオープンフォーカス

フェーミ博士のThe Open-Focus Brain 第10章 Attention and Psychotherapyの中で、伝統的な心理療法とオープンフォーカスの関係が述べられています。 私も、シャドーワークが対象とする抑圧に対してオープンフォーカスをどのように位置づければいいのだろう…