ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

今ここ

私たちは勘違いしていた

(2021年1月1日、モーニングショーより撮影) 私たちは勘違いしていた。 「今」とは、過去と未来に挟まれた刹那であると。 であるから 今ここを軽んじ、 こころは先へ先へ、あるいは前へ 彷徨う。 しかし、そうではなかった。 〈今〉とは、過去を含み未来を…

フローの一条件として「接戦で〈今〉にあり続ける」こと

昨年の10月から卓球を再開して1年が経ちました。 最近になって「これはフローかも??」と思える瞬間があったので、今回は「フロー」をテーマに書いてみたいと思います。 フローについては何回かこのブログで取り上げています。 特に2010年の8月30日のブログ…

〈自己=世界〉と「常に現前する気付きの意識」

『仏教3.0を哲学する』のp110、P111に描かれている第五図、第六図がとても興味深いです。この絵にあるような「自己ぎりの自己」すなわち〈自己=世界〉を実感を持って確立するためにはどうすれば、あるいは「どうあれば」いいのだろうかということを改めて考…

無我とは本質なき実存、主体としての空

〈画像はintegrallife.comの Integral Mindfuinessより〉 藤田一照氏、永井均氏、山下良道氏鼎談『〈仏教3.0〉を哲学する』を見ております。 第1章に、「無我と本質と実存」という節があり、たいへん興味深く読ませていただきました。主に永井氏によるコメン…

生きかた「知縁」カフェ、はじめます!

勉強会「生きかた知縁カフェ」第1回(9/17)を開催します。 知的好奇心が強く心理哲学的なアプローチと脳科学など最新の科学を融合させたい定年前後のシニアの方々の参加を想定していますが、「生きかた」に関心のある方ならどなたでもOKです。 NPOの審査や…

二種類の現在と直接経験

入不二基義さんの『ウィトゲンシュタイン~私は消去できるか~』(NHK出版)のなかにウィトゲンシュタインのいう現在および直接経験についての解説が興味深かったので、ここに紹介させていただく。(以下p75~p76から引用) 物理的な事実と直接経験の違い…

心理的柔軟性を失ってはいないか

昨日、「そうか!自分は心理的柔軟性を失っていたのだ」と気づきました。 10月に内面的にやや切羽詰った状況(以下、状況Aと呼びます)があり、それが軽いトラウマになっていたのでした。 考えてみると不思議な気がします。 ネガティブな状況Aを経験して、そ…

非二元への扉、世界とぴったり重なっている私

まず、ウィルバーの「存在することのシンプルな感覚」の訳者あとがきで、松永太郎さんが書かれた文章を抜粋したいと思います。 (以下引用)この非二元への開眼は、恐ろしくシンプルで、誰にでも開かれている。徹底的に「平等」である。修行したり、勉強した…

灰色の男たちの罠から抜け出し、ゆっくり動こう

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とこのブログで取り上げた過去のテーマとの関連を見ています。今回はACTの4つ目のコアである「今この瞬間との接触」です。私がごくごく簡単にまとめたACTのまとめは次のようなものです。 ACTその4 今こ…

いま以上の何ものかになろうとしていないか

しばらく前から書き留めておきたいコンセプトがあって、それをどう表現しようかと思っていたところ、昨晩ヒュー・プレイサーの「わたしの知らないわたしへ」(中川吉晴、訳)の中から、「私は常にいま以上の何ものかになろうとしてきた」という一文を見つけ…

観察者としての自己による傾聴とヘルプ

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)でいう『観察者としての自己』にとどまる(ウィルバーの表現では”Rest as the Witness”)ことが、ヘルプしようとする人の話を聴く姿勢としてもたいへん望ましいものである、ということがわかりました。 …

マインドフルネスで包んだ後にくる洞察

ティクナットハンの「怒り」(岡田直子訳)を読んだ。 とても得るところが大きかったと思う。 恐れや怒り、不安、悲しみなどネガティブな感情(心的構成物)にどう向き合うか?が書かれていた。 その向き合い方はどの感情も同じだが、この本では特に人間関係を…

調子を良くする「おーとっと」

年末から、自分にとって尊い(?)感覚をいくつか思い出していた。 中学の頃、卓球をしていた時のあの感覚。腹が入っていて、どこに打って来られても返せる感覚。映画「フォレスト・ガンプ」の卓球のシーンを見ると思い出す。そんな感じ、そんな感じだ。 小…

5つのポータル

Dalal はPortals into Enlightenment という節で、エックハルトの提示する5つのポータルを取り上げています。(以下引用) 私が特に有用性を見出したエックハルトの教えのユニークな側面は、彼が直接にそして即座に(特定のテクニックの実践を行うことなく)…

メンタルノイズを目撃する

“Eckhart Tolle & Sri Aurobindo”からトーレのいうEgoic Selfの特徴を見てきています。 Egoic Selfの特徴として上げられている項目は7つあります。 Fear―Insecurity Resistance―Complaining (既述) Needing Ever More―Desire(既述) Looking to the Next …

Waitingに気づく、そして存在することのシンプルな感覚

引き続きエックハルト・トーレのいうThe Egoic SelfをDalal博士の解説でみて行きます。 Looking to the Next Moment―Waiting いつもwantingとneedingの状態にある必然の結果として、常に未来に生きる傾向をもたらす。 人は、今この瞬間に喜びや満足を見出す…

大事なのはbeing in the Nowを感覚として実践できること

Do you treat this moment as if it were an obstacle to be overcome? Do you feel you have a future moment to get to that is more important? Almost everyone lives like this most of the time. Since the future never arrives, except as the prese…

不測に立ちて無有に遊ぶ

さまざまな物事が不確定であり、〆切に間に合わせることだけを目指して、不確実性の藪の中を歩いているように感じるこの頃ですが、どうも違う、違うと囁く声があることも意識していました。そして今朝、頭に浮かんだのは以前からどこかで書きたいと思ってい…

性格とは心の鎧、とらわれず乗りこなす

京都でのケンウィルバー勉強会の5回目に「タイプ」の学習としてエニアグラムが取り上げられる予定になっていることから、「エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ」(ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン著 角川書店)を読みました。 これがなかなかに…

私とは誰か?自己同一性のライン

今回はインテグラル理論の発達ラインの中の自己同一性(セルフ・アイデンティティ)のラインを取り上げたいと思います。 LeovingerとCook-Greuterがその研究者として名前が上がっていたので、探していたらクイーンズ大学の心理学のサイトの中にコンパクトに…

非‐時間、非‐空間としての「今、ここ」

眠る前にいつものように「存在することのシンプルな感覚」を読み返していて、「ここはちょっとマークしておかないと」と思い、さらに翌日、「そうか分かりやすいな、ここ」「原文はどう書かれているのかな」「いままで見たなかで一番完璧な『今、ここ』の説…

Meditation Practiceその1 呼吸瞑想

ILPのスピリット・モジュールではMeditation Practicesとして5つの瞑想が紹介されています。そこではまず以下の書き出しから始まり、簡単に5つの瞑想が示された後、各々の瞑想が詳しく示されています。今回はその書き出しの部分とすべての瞑想の基礎ともいえ…

ネガティブな感覚を気づきのサインとして役立てる

「気になること」などがあると、考えていないつもりでも、そのことが無意識に心の一定の容積を占めていることがあります。そんな時は、どこか緊張したり、少し胸がしめつけられたり、自己収縮のネガティブな感覚があります。 一般的な反応もしくは対応として…

思い出してきた、「今ここ」の感覚

Eckhart TolleのThe Power of NOWを読んでいて、「今ここ」にあるときの感覚として「ぴったりと静止している」と書いてあるところ(和訳p96)があり、その部分を読んでからある感覚を思いだしました。 わたしは中学、高校と卓球をしていたのですが、その卓球…

「過去」、「未来」はなく、「いま」しかない、ことについて

過去は記憶として思考のなかで体験され、未来は予期としてやはり思考のなかで体験される。 過去や未来を、直接に、見たり、聞いたり、匂ったり、触れたり、味わったりすることはできない。 このように(五感を通して)直接体験できるのは過去でも未来でもな…

「気をとられている」ことに気付く、ことから

訳者の松永太郎さんがケンウィルバーの「存在することのシンプルな感覚」のあとがきで次のように書かれていますところがあります。 “Presence”とは「現前」と訳されるが、それは「今、ここにいる」ということである。日本語では「気をとられる」というが、私…

今、ここ NOWHERE

ウィルバーの「存在することのシンプルな感覚」P336に次のようにあります。 次元や延長をもたない点、持続や日付をもたない瞬間、それが「絶対」である。それはどこにもなく、あらゆるところにある。これが偏在〔あまねく、ある〕ということの意味である。絶…

呼吸を日常生活の気づきに利用する

実践ヴィパッサナー瞑想「呼吸による癒し」の第6章日常生活と共に呼吸する、を読んでいて「ああ、やっぱり私が高校時代に経験したことのある、あのやり方でいいんだ」とあらためて思いました。 特に関心を引いたのはこんな文章です。 (以下引用)呼吸は現在…