ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

ACT

複雑系とは?散逸構造と自己組織化、創発と相転移

複雑系とは何か?ネット検索してみると出てくるのはこういう解説だ。 多くの要素からなり、部分が全体に、全体が部分に影響しあって複雑に振る舞う系。従来の要素還元による分析では捉とらえることが困難な生命・気象・経済などの現象に見られる。高精度の測…

本質の無化から、無「本質」的分節へ

前回に引き続き井筒俊彦氏の『意識と本質』を見ていく。 本論に入る前に、井筒氏の使用する「分節」あるいは「無分節」ということばであるが、『意識の形而上学~大乗起信論の哲学』のなかでこう解説されている。 仏教古来の術語に「分別」という語があって…

「実存としての自己」を直覚させる「あなたはあなた」

「かぶき者慶次」という時代劇を見た。関ケ原の戦いの後、石田三成の子を前田利家の甥にあたる前田慶次がかくまって、上杉家の領地である米沢の地で秘かに育てているという設定である。前田慶次は実在した人物だが、石田三成の子はドラマでの名は新九郎とい…

生きかた「知縁」カフェ第3回についてのお知らせ

今年の9月25日に出版された3人の鼎談からなる『〈仏教3.0〉を哲学する』がとても面白いです!! このことを受けて、第3回の生きかた「知縁」カフェの3つ目のテーマとして、以下の内容を書き添えました。 「観察者としての自己」を取り上げ、藤田一照氏、永井…

無所住心で囚われを捨てる

NHKスペシャルの「キラーストレス」とEテレの「マインドフルネス」が放送された直後に出版された熊野宏昭さんの「実践マインドフルネス」に、脱フュージョンの次のステップとして、「場としての自己=注意を無数に分散する」という実践が紹介されています。 …

第4回生きかた「知縁」カフェ

脳科学の視点を取り入れ、ウィルバー哲学、マインドフルネス、ACT、アドラー心理学などを横断的に学ぶ勉強会です。ソーシャルビジネスへの展開も視野に入れ、交流します。 【生きかた「知縁」カフェ第4回 内容】 ①今回のテーマ:最近のブログから「人類進化…

国立がんセンターでACT外来が!(生きかた「知縁」カフェ第1回のPR)

国立がんセンターに「ACT外来」ができています。これは正直驚きました。しかも保険診療です。www.ncc.go.jp 内容を以下に転載させていただきます。 ACT外来では、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を通して、(1)がん体験に伴って生じる悩みと…

マインドフルネス・ムーブメントが日本に?

2016年8月5日発行の精神療法~特集マインドフルネスを考える、実践する~が本日届きました。 寄稿されている先生方のうち、名前を存じている方も多く、書籍を読んだり、勉強会で取り上げたり、直接学んだりした内容もあってたいへん興味深いです。 まず、「…

脳科学で証明されるマインドフルネスの効果

昨日NHKで放送されたサイエンスZEROに熊野宏昭氏(東京大学博士(医学)で現在早稲田大学人間科学学術院教授、応用脳科学研究所所長)が出演し、マインドフルネスの最近の科学的な知見について解説がありました。 番組では、まず仕事の効率化やストレス低減…

生きかた「知縁」カフェ、はじめます!

勉強会「生きかた知縁カフェ」第1回(9/17)を開催します。 知的好奇心が強く心理哲学的なアプローチと脳科学など最新の科学を融合させたい定年前後のシニアの方々の参加を想定していますが、「生きかた」に関心のある方ならどなたでもOKです。 NPOの審査や…

『寛容論』を実践する、すなわち脱ペインボディ。

昨年1月のパリのテロの後、フランスの思想家ヴォルテール(1694-1778)の著書である『寛容論』が10万部のベストセラーになったといいます。 今月の2日に放送された『100分de平和論』で作家の高橋源一郎さんが取り上げた名著です。 トゥールーズのプロテスタ…

離れ内、近く外〜自己認識の変容〜

福は内、鬼は外 節分の豆まきの言葉であるが、家の玄関を境界として、幸福をもたらしそうなものはどうぞお入りください、不幸をもたらしそうなものはどうか外へ、という掛け声である。しかしながらそうすると、外の世界は鬼ばかりいる怖いところになってしま…

〈私〉と〈今〉は同じものの別の名

哲学者である永井均さんの著書『私・今・そして神』の中に、注目すべき表現があったのでその部分に線を引いた。それは「開闢(かいびゃく)の奇跡」という節のなかに書かれている。(以下、P40~p42より引用) ある名付けえぬもの ・・・ まあ、基本的には、…

必ずしも意図していないものを読み解くという楽しみ方

脳内ポイズンベリーという映画を観た。 若い男女の三角関係がストーリーの恋愛映画で、映画館も若い人が多く、少々気恥ずかしい感じがした。 にもかかわらず、わざわざ見に行こうと思ったのは、主人公の脳の中にポジティブ、ネガティブ、衝動、記憶、そして…

心の形成物≒ペインボディ≒認知的フュージョン

五蘊(ごうん)、とくにその第4である「心の形成物」(mental formation)の相互依存性ということを考えているうちに、ティクナット・ハン師のいう「心の形成物」とエックハルト・トールのいう「ペインボディ」、そしてさらにACT(アクセプタンス&コミットメ…

心理的柔軟性を失ってはいないか

昨日、「そうか!自分は心理的柔軟性を失っていたのだ」と気づきました。 10月に内面的にやや切羽詰った状況(以下、状況Aと呼びます)があり、それが軽いトラウマになっていたのでした。 考えてみると不思議な気がします。 ネガティブな状況Aを経験して、そ…

問題解決モードと夕陽モード

スティーブン・ヘイズ他著「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版」を興味深く読み始めました。あらためて、ACTは本当に素晴らしく永遠の哲学の伝統にある知恵と現代心理学を橋渡ししているなと思いました。 それはともかく今回は、こ…

概念としての自己と脱同一化する時間をもつ

最近、ルパート・スパイラの「プレゼンス」という本をとても興味深く読んでいます。 Presenceは「現存」と訳されています。ウィルバーの著書の多くを訳された松永太郎さんはPresenceを「現前」と訳しました。文脈によって「いまここ」とも表現されていました…

ありのまま、起こるがまま、そして「あるがまま」

「あるがまま」とは、「ありのまま」、および、「起こるがまま」を含んで超えているのだと思いました。 まず、「ありのまま」とは、何でしょうか。 それは、ベールを通さず、無濾過のリアリティを見ることです。 私たちヒトは、「関係づける能力」を発達させ…

灰色の男たちの罠から抜け出し、ゆっくり動こう

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とこのブログで取り上げた過去のテーマとの関連を見ています。今回はACTの4つ目のコアである「今この瞬間との接触」です。私がごくごく簡単にまとめたACTのまとめは次のようなものです。 ACTその4 今こ…

概念としての自己をPRしている自分を見て笑おう

今回みていくのはACT(アクセプタンスコミットメントセラピー)の「観察者としての自己」です。ウィルバーのいうWitnessであり、目撃者、あるいは観照者と訳されています。このブログでは基本的に目撃者と書いてきました。これは、清水博先生のいう場所中心…

貼りつけたレッテルをはがし「ありのまま」をみる

前回に引き続きACTのコアである6つのプロセスについて、過去のブログとの関連を見て(ウィルバー、ACT、ティクナットハン、エックハルト・トール、ミンゲールetc)に共通する横糸を通してみたいと思います。今回はその2つ目、脱フュージョンです。 脱フュー…

自己収縮にとどまる、何もしないをする

小児がんコンサルタントのブログでACTのまとめを掲載しました。 http://childcancerconsul.blogspot.jp/ こちらのブログでは、「ウィルバー哲学に思う」の観点から、それに横糸を通してみようと思います。ACTには6つのコアになるプロセスがあるとされていま…

どれほどそれを受け流せるのか

最近わたくしごとに関するさまざまな物事が大きく動いているおかげで、外部の関係者とのあいだで葛藤が生じる。 思いも寄らぬ一撃であったり、思わぬ人からの不意打ちのような予期せぬ形でそれはやってくる。 このことをどう考えればいいのだろうか?と昨日…

アイデンティティを強めようとする傾向に気づく

20歳代の後半だったように思う。自分はいったい何がしたいのか。何が生きがいなのか? どんな時に仕事にやりがいを感じるのだろうか?とよく考えたことがあった。 そのときの結論はかなり長い間、私の中で疑問視されることなくあった。 その時に得た結論は、…

すでにそうであることこそ破線ではなく、実線。

あらゆるモノやコトに内在する「無根拠性」にどのような姿勢で臨めばよいのか?ということを考えていました。 この「無根拠性」は、以前David Loyの著書から引用して「絶えまない欠乏の感覚(a sense of lack)をもたらすもの」 絶えまない欠乏の感覚(a sense …

観察者としての自己の成長

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を構成する6つの要素(注)のなかでは、「観察者としての自己」が最も重要なのではないかと思う。 「観察者としての自己」の視点が定着し成長するとどうなるのであろうか? ケン・ウィルバーの「存在する…

観察者としての自己による傾聴とヘルプ

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)でいう『観察者としての自己』にとどまる(ウィルバーの表現では”Rest as the Witness”)ことが、ヘルプしようとする人の話を聴く姿勢としてもたいへん望ましいものである、ということがわかりました。 …

不快は追い払わず、息とともに観察する

ティクナットハンの「微笑みを生きる」(邦訳、池田久代)にはマインドフルネスのことが分かりやすく書かれています。 今回はその「感情の川」(p64)という節から、不快な感情とどう向き合えば良いかについて書かれている部分を紹介したいと思います。 (以下引…

脱フュージョンで出来事と評価を切り分ける

ACT(アクセプタンス&コミットメント セラピー)では、 ・アクセプタンス ・脱フュージョン ・文脈(観察者)としての自己 ・今この瞬間との接触 ・価値 ・コミットメント の6つを主要な構成要素としている。(こころのりんしょうa la carte 2009.3 p81) …

「無意識の回避」から「意識的な受容」へ

ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)の勉強を進めていて、あらためて思うのは、まず、われわれはネガティブな状況や出来事、そしてそれに反応する内面の現象を、無意識に避けようとする傾向があるということだ。 しかしそうではなく受け容れね…

ことば、そして「関係づける能力」の功罪

7月14日の「マインドフルネスで包んだ後にくる洞察」に対して、ACTと似ていますね、とコメントをくださった方があった。 ACTとはアクセプタンス・コミットメント・セラピーの略で「第三世代の認知行動療法」と呼ばれているとのこと、早速、”Get Out of Yo…

Milton's Secretと「二本の矢」

エックハルト・トールが子ども向けに書いたMilton’s Secretという絵本があります。ベストセラーThe Power of Nowのエッセンスがたいへん分かりやすく書かれているので、子ども向けにもお勧めなのですが、そこで主人公のMiltonが気づくことと、小児がんのサバ…

風船モデル

感情とどう付き合うか?を考えていて、イメージとして出てきたのは風船です。 話した言葉、口に出した会話を図で示す場合に吹き出しが使われますが、心の中で思ったことなどの吹き出しには泡型の吹き出しが使われます。 例えば不安のようなネガティブな感情…

自伝的記憶が形成したアイデンティティとの同一化をやめる

今日は4月11日に続いて「わたし観の転換Ⅱ」を書きたいと思います。 私たちは「私とはこのような人だ」と考えるとき、そのベースとなる自分の過去の出来事の記憶を持っています。このような記憶を自伝的記憶といいます。自伝的記憶は次のように説明されていま…

「過去」、「未来」はなく、「いま」しかない、ことについて

過去は記憶として思考のなかで体験され、未来は予期としてやはり思考のなかで体験される。 過去や未来を、直接に、見たり、聞いたり、匂ったり、触れたり、味わったりすることはできない。 このように(五感を通して)直接体験できるのは過去でも未来でもな…

僕って何? 〜わたし観の転換〜

「僕って何」は芥川賞を取った三田誠広の本の題名ですが、(たしか高校生のときに課題図書で読んだ記憶があります。)この僕って何なのか、私とは?ということに関して、それまでの認識がまったく間違っていたんだ、(本のことではなく)と気づき始めたのは…