ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

Let it goまたはLet it be

目撃者と火の鳥のまなざし

2000年以降の人生で、私がもっとも救われたのは、ウィルバーの「目撃者」(Witness)である。この週末にも、エゴの情動を揺さぶる穏やかならぬ小さな出来事があった。そこで枕元の『存在することのシンプルな感覚』第1章「目撃者」を再読した(何百回目かの再…

from 原初の回避 to 全景画(Total Painting)

「原初の回避」については、『インテグラル理論を体感する Integral Meditation』(ケン・ウィルバー著)にこうある。 けれどもよく観察してみると、私たちはあまりにも多くの場合、何らかのものを「見たくない」と感じています。… ちょっとした不快な身体感覚…

悲観的シニフィエを看破し続け闊歩する

5億光年の宇宙地図〈ラニアケア超銀河団〉(NHKより) 新年あけましておめでとうございます。 まず、このタイトルを元日の記事に持ってきたのは、忘れてはならない貴重なコンセプトであると、昨年10月ごろから幾度となく思い返したからです。 私たちは得てし…

正しく怖れよ!有益な思考と無益な妄想

思考がお化けをつくり出していないか? それは、あらぬ妄想だ。 言葉と記憶によりサピエンスは食物連鎖の頂点にたったが、 今ここに危機はないにも関わらす、心は闘争してしまう。 サピエンスの背負った苦悩である。 コロナから「二本の矢」を受けてはならな…

いつも「意識を意識しておく」

コトバで表現すると何を言っているのか分からないようなことですが、この感じを何とか是非とも書き留めておきたいと思い、書いています。 日常のなかで、いつも、四六時中、どんな時でも、なんと言っても、大切なのは、「意識を意識しておく」ことだというこ…

無所住心で囚われを捨てる

NHKスペシャルの「キラーストレス」とEテレの「マインドフルネス」が放送された直後に出版された熊野宏昭さんの「実践マインドフルネス」に、脱フュージョンの次のステップとして、「場としての自己=注意を無数に分散する」という実践が紹介されています。 …

青空としてのわたし

このブログでいつも伝えたいと考えていることを「直球、ストライク!」という表現でタイトルになっている鎌倉一法庵住職の山下良道さんの著書「青空としてのわたし」を読みました。 良道さんはもともと曹洞宗僧侶でアメリガでの布教経験を経て、ミャンマーに…

問題解決モードと夕陽モード

スティーブン・ヘイズ他著「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版」を興味深く読み始めました。あらためて、ACTは本当に素晴らしく永遠の哲学の伝統にある知恵と現代心理学を橋渡ししているなと思いました。 それはともかく今回は、こ…

収縮の感覚をただ観察する

ウィルバーの著書『ワンテイスト』の中に、「これは仕上げのエクササイズと呼べるだろう」と書かれているものがあります。 (ワンテイスト下P154より以下引用) 観照者として休息し、自己収縮を感じること、これこそワンテイストが最も現れやすくなる空間で…

ありのまま、起こるがまま、そして「あるがまま」

「あるがまま」とは、「ありのまま」、および、「起こるがまま」を含んで超えているのだと思いました。 まず、「ありのまま」とは、何でしょうか。 それは、ベールを通さず、無濾過のリアリティを見ることです。 私たちヒトは、「関係づける能力」を発達させ…

自己収縮にとどまる、何もしないをする

小児がんコンサルタントのブログでACTのまとめを掲載しました。 http://childcancerconsul.blogspot.jp/ こちらのブログでは、「ウィルバー哲学に思う」の観点から、それに横糸を通してみようと思います。ACTには6つのコアになるプロセスがあるとされていま…

コントロールを手放し浮力を感じて生きる

ある新しいことをやろうと決意したのですが、どのように進めていいか分からないでいました。 今もまだ分からないのですが。 といいますか、もともと現時点からは、やや飛躍しているので、その道筋がよく見えないでいます。 ですから当然といえば当然なのです…

どれほどそれを受け流せるのか

最近わたくしごとに関するさまざまな物事が大きく動いているおかげで、外部の関係者とのあいだで葛藤が生じる。 思いも寄らぬ一撃であったり、思わぬ人からの不意打ちのような予期せぬ形でそれはやってくる。 このことをどう考えればいいのだろうか?と昨日…

観察者としての自己による傾聴とヘルプ

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)でいう『観察者としての自己』にとどまる(ウィルバーの表現では”Rest as the Witness”)ことが、ヘルプしようとする人の話を聴く姿勢としてもたいへん望ましいものである、ということがわかりました。 …

「無意識の回避」から「意識的な受容」へ

ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)の勉強を進めていて、あらためて思うのは、まず、われわれはネガティブな状況や出来事、そしてそれに反応する内面の現象を、無意識に避けようとする傾向があるということだ。 しかしそうではなく受け容れね…

喜びの感覚をもって、不自由さと共に生きた人

本日はご多忙の中をMの葬儀にご参列いただきまして誠にありがとうございます。 親族、遺族を代表して一言ご挨拶申し上げます。 Mさん(享年83歳)は平成11年に脳梗塞を患いました。 そして、歩くことと話すことが不自由になり、しばらく歩行器を使っていまし…

The Suffering of Change 変わりゆくものに執着する苦しみ

ミンゲールのJoyful WisdomのP52から、二つ目の苦しみのタイプThe Suffering of Changeについて書かれている(一つ目はSuffering of Suffering、三つ目はPervasive Suffering)。 「変わりゆくものに執着する苦しみ」と訳すのが適切ではないかと思う。以下に…

Meというスーツを脱いで「背景にある感覚」に気づく

昨日から今日にかけて2つの英文ブログ(エリック・トンプソンとエックハルト・トールの最新記事)を読んだ。「いい内容だ」という印象と、互いに共通する点もあるなあと感じ入り、日本語訳を残したい思いもあって、気づきのあったことを含め、以下に書かせて…

Let It Beによって全体性に整合する

先日久しぶりにカラオケに行った。行くと必ず歌うのがビートルズの曲であるが、今回はLet It Beを歌った。 これはポールの曲でありキーがやや高いので、2♭下げて歌った。それはともかく…。 エックハルト・トールを読んで、重要なポイントを3つあげるとした…

5つのポータル

Dalal はPortals into Enlightenment という節で、エックハルトの提示する5つのポータルを取り上げています。(以下引用) 私が特に有用性を見出したエックハルトの教えのユニークな側面は、彼が直接にそして即座に(特定のテクニックの実践を行うことなく)…

すでにそうであることへ「抵抗する」傾向に気づく

A.S.Dalal博士はシュリ・オーロビンド研究の第一人者です。彼のA GREATER PSYCHOLOGYという著書ではケン・ウィルバーが巻頭言を書いたりしています。彼の著書でエックハルト・トーレとシュリ・オーロビンドの教えを対比させて書かれた本があります。最近、そ…

左上象限のSurrenderに符合する右上象限のα波

フェーミ博士のThe Open-Focus® Brain(注)を読んでいます。第2章のタイトルがSweet Surrenderとなっており、どういう意味かな?と思いながら読んでいましたが読み進むうちに納得がいきました。以下P30〜P31からの抜粋です。 商業ベースのEEGバイオフィ…

「悪い無限」を空なる心の自由へと反転する、それは「無形の位」

David LoyのLack and Transcendenceの中には興味深いことがいくつも書かれています。 P94から、私が朱線を引いたところを以下にいくつか抜粋してみます。(以下引用拙訳)〔 〕は私の補記です。 私たちの最も問題となる二元性は、死に対する生ではなく、自己…

絶えまない欠乏の感覚(a sense of lack)をもたらすもの

インテグラル・ジャパン代表である鈴木規夫さんのブログの次の文章、に惹かれるものを感じ、特にa sense of lackとthe Atman Project にピクンとしてDavid LoyのLACK AND TRANSCEBDENCEを購入しました。 http://integraljapan.net/wordpress/suzuki/?p=218よ…

根源的恐れを明け渡すレベル1

前回のブログの続きです。インテグラル理論の「タイプ」のひとつであるエニアグラムを考察しています。 エニアグラムのそれぞれのタイプには、健全なレベル、通常のレベル、不健全なレベルという1から9のレベルがあります(レベル1が最高、レベル9が最低…

困難な状況でも態度は選択できる

実存主義心理学者ヴィクトール・フランクルのいう「態度価値を実現する」とはまさに表題の「困難な状況でも態度は選択できる」ということです。前回のブログに通じる部分があります。 フランクルはアウシュビッツでの体験をもとに実存分析と意味による心理療…

私とは誰か?自己同一性のライン

今回はインテグラル理論の発達ラインの中の自己同一性(セルフ・アイデンティティ)のラインを取り上げたいと思います。 LeovingerとCook-Greuterがその研究者として名前が上がっていたので、探していたらクイーンズ大学の心理学のサイトの中にコンパクトに…

風船モデル

感情とどう付き合うか?を考えていて、イメージとして出てきたのは風船です。 話した言葉、口に出した会話を図で示す場合に吹き出しが使われますが、心の中で思ったことなどの吹き出しには泡型の吹き出しが使われます。 例えば不安のようなネガティブな感情…

3-2-1 Shadow Process+目撃者

ウィルバーのIntegral Life Practiceのコア・モジュールの1つであるシャドウ・モジュールを読み終えました。読み応え、十分!という感触です。 前半は、影の説明と3-2-1 Shadow Processを使ったシャドウ・ワークが、3つの具体例を織り交ぜながら解説されて…

明け渡し Surrender

木漏れ日の 浮かぶ水面で 明け渡し 15年ほど前、夏には、よく大学の裏山の小さな渓流に子どもをつれて出かけました。 4mほどの深さの滝つぼの周辺では、泳ぐこともできましたので、滝つぼに飛び込んだり、潜ったりしたものでした。 一番好きなことは、水面…