ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

Integral Medicine

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おしゃれでカラフルなCDジャケットのようなウィルバーの本Integral VisionにIntegral Medicineの記述がありましたので紹介します。(以下拙訳)

医療ほど、早速に応用できるIntegralモデルはどこにもありません。そして世界中のヘルスケアの実践者によってますます適用されています。四象限を通過する旅は、なぜINTEGRALモデルが役立つのかを見せてくれます。オーソドックスで従来的な医療は、由緒ある右上象限のアプローチです。それは物質的介入を使用することによって、ほとんどまったく物質的な有機体を扱います。手術、麻酔、薬剤、そして行動変容。オーソドックスな医療は、本質的に物質的疾患の物質的原因を信頼します。それゆえ、大抵の場合、物質的介入を指示します。

しかし、Integralモデルはすべての物質的イベント(UR)は、少なくとも四つの次元(象限)をもち、そうして、身体的疾患さえもすべての四象限から眺めるべきである(レベルはいうまでもなく、それは後ほど取り上げます)と主張します。Integralモデルは、右上象限が重要ではないと主張しているのではなく、言うなれば、それは物語の四分の一に過ぎないと主張しているだけなのです。
 最近の代替医療に対する関心の増加は―精神神経免疫学の学説のようなものは言うまでもなく―人間の内面の状態(彼らの感情、心理学的態度、イメージ、そして意思)は身体的疾患でさえ原因と治療の両方において重大な役割を果たすということを明確にしました。他の言葉で言うと、包括的な医療ケアにおいて左上の象限はキーとなる重要な構成要素であるということです。視覚化、暗示、そしてイメージの意識的利用は、大抵の疾患のマネジメントにおいて重大な役割を果たすことを経験的に示しており、結果は、感情的な状態や心理的態度に左右されることが示されています。
 しかし、それらの主観的要因と同じぐらい重要なのが、個人の意識は真空に存在する訳ではなく、それは共有されてきた文化的価値観、信念、世界観に離れがたく組み込まれて存在しているということです。特定の疾患の文化的(LL)見解―配慮と同情を持ってなのか、あるいは嘲笑と軽蔑をもってか―がどうであるかは、個人がその疾患にどのように対抗するか(UL)ということに対して深刻な衝撃をあたえます。それは身体的疾患そのものの経過に直接影響しうるのです(UR)。

左下象限は膨大な数の間主観的要因の全てを含みます。それはどんな人間の相互作用においても重大です。医師と患者のあいだで共有されるコミュニケーション、家族や友人の態度、そして彼らが患者にどのように伝えるか、特定の疾患(たとえばAIDS)への文化的受容(あるいはそれによる権威の失墜)、疾患そのものが脅かす文化の本当の価値など。それらの要因のすべては、どんな身体的疾患においても、ある程度は原因となり、治療となります。(それはシンプルにいうと、すべての出来事は四象限をもっているからです。)
…それらの要因は有効に作用します。それは、おそらく医師と患者のコミュニケーションスキル、家族と友人のサポートグループ、疾患に対する文化的判断とその影響についての一般的理解などです。研究は首尾一貫して、例えば、サポートグループに参加したがん患者は、同様の文化的サポートのない人たちより長く生存することを示しています。左下象限のより関連した要因のいくつかは、どんな包括的な医療ケアにおいても、決定的に重要なのです。
 右下象限は、すべての物質的、経済的、社会的要因に関係します。それらは決して病気の部分としてはほとんどカウントされませんが、がしかし、事実、他のすべての象限と同じように、病気と治療、両方の原因となります。食料を配送できない社会システムはあなたを死に追いやる(悲しいかな、飢饉に見舞われた国が毎日それを証明しています)。

現実の世界では、すべての存在は四象限をもっており、右上象限のウイルスは震源の問題になるかもしれませんが、治療薬を配送する社会システム(LR)がなければ、あなたは死ぬでしょう。それは分離した問題ではなく、問題の中心です。なぜならすべての出来事は4象限をもっているからです。右下象限は経済、保険、社会伝達システムのような要因を含み、環境毒のような項目に言及するまでもなく、どのように病室が物質的にレイアウトされているかということと同じようなシンプルなことでさえそこに含まれます。(そのことのよって動きやすく、訪問者にも面会しやすく・・・etc.なるのでは?)前述の項目は疾患の原因と管理の「全象限的」側面に関係します。

「全レベル」の方は、個人は少なくとも身体的、感情的、心的、スピリチュアルなレベルをそれぞれの象限で持っている(図表8参照)という事実に関係します。いくつかの疾患は、大体は物質的な原因と物質的な治療法を有しています(バスに当てられ、足を折る)。しかし大抵の疾患は、感情的、心的、スピリチュアルな構成要素を含んだ原因と治療法を有しています。文字どおり、世界中の数百人の研究者が、病気と治療法の「複数のレベル」の性質に対する私たちの理解を限りなく補足しました。要点はシンプルで、四象限にこれらのレベルを追加することによって、さらに多くの包括的―効果的、な医療モデルが現れ始めるということです。
 省略して言うと、真に効果的、包括的な医療プランは全象限、全レベルとなるでしょう。この考えは簡単です。それぞれの象限あるいは次元―I, We, It―は肉体的、感情的、心的、そしてスピリチュアルなレベルとwaveを有し、真の統合的治療はこれらのリアリティを考慮に入れるということです。統合的治療のこの様式は、より効果的なだけではなく、より費用対効果が優れているという理由によって、組織的医療さえもそれが間近いと見ています。(拙訳ここまで)
 

特に左下象限に関して、「特定の疾患の文化的(LL)見解―配慮と同情を持ってなのか、あるいは嘲笑と軽蔑をもってか―がどうであるかは、個人がその疾患にどのように対抗するか(UL)ということに対して深刻な衝撃をあたえます。」と書かれている部分が参考になりました。 

私(I)にとっての私たち(We)を構成しているCollectiveのレベルを上げることが重要なのだ、と。例えば、小児がんなら患児にとっての主要な「私たち(We)」は家族と学校のクラスメートです。ですから、この文脈でいうと家族と学校のクラスの価値観のレベルを引き上げることが重要になります。・・・う〜ん、いろいろと思い当たります。

あるいは、クラス以外に患児の居場所となるコミュニティを形成することも大切な取り組みだとわかります。・・・これも納得です。これまではNPOの活動を四象限だけで考えてきましたが、そこに深さの軸を加えて考えることができそうです。全象限、全レベル・・・AQALの枠組みを使いこなしたいと思います。