読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

心身統合とSubtleエネルギー

subtle(微細) 宮本武蔵 フロー マズロー インナーボディ Presence(現前、現存)

ILPのボディモジュールの中のSubtle Body Practicesという節を読み終えました。172〜190ページまでかなりの枚数が割かれていました。このsubtleボディ、subtleエネルギーの実践に関する記述は、従来のウィルバーの著書ではあまり見られない貴重なものでした。

ヴィジョン・ロジックの段階ケンタウロスの段階に対応していますが、これは世界観でいうとグリーン、ティール、ターコイズの3段階にあたります。しかしグリーンとティールの間には第一層と第二層の大きな壁、深い溝が存在します。前回取り上げた非視点的狂気がグリーンの病理として現れ、そしてそれを由々しき跳躍によって超えていくことでグリーンからティールへ、第一層から第二層への発達がなされるのです。

ケンタウロスの段階が象徴するのは「心身統合」です。人間の顔と動物の体をもつものとして描かれるケンタウロスは理性的な心(頭)と本能的な体の統合体であるという意味です。そしてこの「心身統合」は第一層から第二層への由々しき跳躍の鍵となるポイントではないでしょうか。第二層のティールとターコイズ段階はマズロー自己実現段階とも対応しています。その段階ではもはや欠乏に動機づけられるのではなく、充溢に動機づけられるとされています。心身統合による充溢によって動機づけられ自己実現を果たしていくのがこの段階ということでしょう。

この「心身統合」するために、極めて重要な実践がSubtle Body Practicesです。Subtleエネルギーは意思的な心と肉体的な身体の間のミッシング・リンク(失われた輪)です。瞑想中だけでなく、日常的にSubtleエネルギーの作動をコントロールできるようになることは、一時的なStateを次第に定着化させStageへと高めていくでしょう。この心身統合(body-mind integrates)段階があって次の心身脱落(body-mind drops)へと進んでいくのです。

この心身統合(心身一如)はアスリートにとって、あるいは武道家にとって昔から注目されてきた状態であるともいえます。宮本武蔵「観の目強く、相手をうらやかに見るべし」はまさにそういう状態を作り出すための極意でしょう。アスリートは誰しも大きな大会でのここ一番で、「あのフローやゾーンに入った時の状態に近づけたい」と願うでしょう。それもまた心身統合であるといえます。

この心身統合には「呼吸」と「3つのH」が大きな役割を果たします。呼吸に合わせて、hara, heart, headという3つのHを意識することで、subtleなエネルギーを循環させるのです。臍の下の丹田の部分をILPではharaと表現しています。「腹に力を入れる」「腹から声を出す」など日本人には分かりやすいですね。まさにそのharaです。喉から身体の前面を通ってheartからharaへと息を吸います。そしてbodyの底から背面を通ってheadへ上がっていくように息を吐きます。それを繰り返すことでsubtleエネルギーが感じられるようになります。私の場合、以前はheadしか感じられなかったのですが、最近はharaとheartも少し分かってきたような気がします。

このsubtleエネルギーはエックハルト・トーレのいうインナーボディと同じでしょう。Milton's Secretの中で、そのエネルギーとともに「いまここに在る」ことを身につけたミルトンに「もはや脅かされない」と言わせたのも、このsubtleエネルギーの作り出した心身統合状態です。

私たちは武道家やアスリートのような十分集中を要求される場面で、このsubtleを使えるだけでなく、不安や苛立ち、焦りや緊張、そして退屈といったネガティブな感情との遭遇に対しても、役立てることができます。日常生活の中でpresent momentに焦点を合わせ、呼吸と3つのHを少し意識することで、状態が大きく改善できます。

すでに瞑想でその感覚を分かっている人なら、日常に持ち込むのは比較的簡単でしょう。まだそうではない人はその感覚が分かるようになるのに時間がかかるかもしれません。しかし、こういう感覚かな?こういうのかしら?とfeelingに注意することを心掛けて行くと、だんだんと「これこれ」とか「きたきた」というように分かっていくはずです。

無意識に心がしゃべっている状態が続いているようなら「おーとっと」と気づき、ひと呼吸入れて、subtleエネルギーを感じるようにしましょう。座っていたくない所に座っていないといけないなら、背骨を伸ばして座りなおしsubtleなエネルギーを楽しみましょう。より明晰な状態になった自分を見つけるはずです。


Subtleは有形で、keep some within としても感じられるものです。それに対してcausalは無形の目撃者として感じられる存在することのシンプルな感覚です。そしてそれが次の段階なのです。