ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

4つのS 微細の熟達

今回は「4つのS」について書いてみたいと思います。この「4つのS」という表現は、私のオリジナルです。それはSituation but States by Subtle, then Stageです。文章にするとWe can manage not Situation but States by Subtle, then Stage.となります。

 まず、最初のSはSituation、すなわち「状況」です。私たちはいつも状況を良くしようと考え、そのために努力する傾向があります。その思考や努力によって状況は改善されることがあります。しかし残念ながら状況が改善されないこともあります。どうしようもない状況があるのです。好ましい状況もいつかは、好ましくない状況に変わっていきます。諸行無常、色即是空です。
 次のSはStates、すなわち「状態」です。Statesを管理するで、書いたように状況を改善できないときでも、状態は改善できます。
 その状態を改善する手段、方法の一つが、3つ目のSであるSubtle energyです。ILPのボディモジュールのSubtleの精通(熟達)という節にこう書かれています。(以下拙訳)


Subtle Mastery 微細の精通
いくつかの伝統の高く発達したヨギにおいては、下降と上昇の流れ(current)は驚くべき強さを伴って流れます(flow)。頭とハートとharaはすべて生命力で輝きます。まぶしい生命の充満性、光り輝くハートの感覚、自由な知性の輝かしい光明があります。これは熟達を伴った場合だけにやってきます。バランスを欠く、あるいは鍛錬されていない人間は、比較的わずかなエネルギーだけを認めます。
 古代叡智の伝統の多くは、body-mindの媒体(vehicle)を強化することに焦点を合わせています。その結果、それはより多くの生命力を指揮できるのです。これが「チャクラをあける」ことの意味です。生命エネルギーを指揮することを学ぶことは、ILPの自然な特徴です。
 毎日のものとして私たちがそれを行う代表的な方法は、日常的な要因が私たちを生命力から引き離して(throw off)しまう感覚を認める能力を開発することです。例えば、もし私たちが、神経質に、あるいは退屈を感じるなら、しゃべり過ぎたり、そわそわしたり、あるいは無意識におやつをつまんだりするのに気づくかもしれません。―そうした行動はすべて私たちに備わった(building up)生命エネルギーを浪費する(discharge)傾向があります。微妙な(subtle)苦悩(distress)を容認する(tolerate)ことを学ぶことで、わたしは異なった種類の不快―身体的、感情的、心的―を含むエネルギー状態の十分な幅(range)を楽しむことができるようになります。呼吸することによって。そして日常的な体験のすべて、特に強度(intensity)と反応(reactivity)を指揮することによって。
 統合的な実践は、私たちの強い、エネルギーに満ちた、妨げのない人体のシステムをすべてのレベルにおいて発達させるのに寄与することで、この指揮能力を促進します。Subtleエネルギー実践は、ハートの感覚と気づきを解放し、呼吸を通じてそれらに関与します。これの役割は、へその下の活力センター〔丹田〕でエネルギーを強化し、全体の身体システムを地に着け(ground)、現前と生の充満性(life-fullness)を際立たせる(emphasize)ことです。そしてもう一つの役割は、エネルギーを脊柱に沿って頭上に導き、光明そして自由との接触を強調することです。(拙訳ここまで)

またこの節に続く、「強烈さの指揮」という節にある、「肉体的な厳しさとともに今にとどまること」も大変参考になります。(以下拙訳)

Conducting Intensity 強烈さの指揮
私たちは、強烈さ(intensity)として増大したエネルギーのレベルを経験します。そしてそれはしばしば、最初は心地よいものではなく感じられます。
 例えば、もしあなたがスクワットをしながら深くひざを曲げて、姿勢を保ったまま呼吸するなら、あなたは足の筋肉に、ほとんど痛いくらいの強いエネルギーを急に感じるでしょう。(関節の痛みは良くないですが、筋肉の継続した痛みは力強い実践となります)
 あなたはそれに反応するよりむしろ、この激しさ(intensity)を指揮する実践を行えますか?それの中で呼吸し、それとして今にとどまり(stay present with)、それが自然に変化し移って行くのを見守れるでしょうか?そんな「指揮すること(conductivity)」がsubtleエネルギーの核となる能力のひとつです。いくつかの点で、あなたはそれが〔指揮する対象が〕ちょうどエネルギーとintensityであると気づくでしょう。そしてあなたは、あなたがそれに追加するものに気づきます。感情と思考―あなたの内面の会話のすべてに。完全に今にあり、瞬間に生起するものに心を開くことは、あなたが追加的なintensityを指揮すること、だけを求めます。あなたは不快に対してどのように反応しますか?それが何のためであるか分かりますか?あるいはそれに抵抗しますか?あるいは反抗をしますか?ボディの実践は、intensityの最中であっても自由な注意と柔軟性を実践するチャンスを与えてくれるのです。
 感情的なintensityとともに今にとどまる能力(stay present)は、肉体的な厳しさとともに今にとどまることに大変似ています。あなたのボスがあなたに何回目か分からないくらいあなたのできることを現実的に超えたことを求めてくるとき、何が起こりますか?エネルギーを指揮する能力はあなたの人生のすべての領域に影響するのです。(拙訳ここまで)

このように、Subtleによって、StatesをConduct(or Manage)します。それが反復され、自然な日常の姿となることで、4つ目のSである、Stage(段階)として定着することになるのです。

生命力から引き離してしまう感覚を容認する能力を高める(例えば自己収縮にとどまる)。そして反応するよりむしろ、このintensityを指揮し、それの中で呼吸し、それとして今にとどまり、それが自然に変化し移って行くのを見守れるようになる、それがSubtleの精通、熟達です。

次は、やや遅れがちになっている、シャドウ・モジュールを見て行きたいと思います。