ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

The 3-Body Workoutの非二元ポイントアウト

ILPの中でも主要な実践、ボディモジュールのthe 3-Body Workoutをまだ取り上げていませんでした。これはウィルバーのIntegral Visionでも1分間モジュールがヴィジュアルに紹介されており、組み立ても、ボディモジュールとスピリットモジュールを包括するような構成となっています。

今回は、まずthe 3-Body Workout全体のステップと、その最初のステップである、causalボディの実践の中から、非二元Pointing-Out Instructionsをピックアップし、気づいたことをコメントしたいと思います。

まず、このthe 3-Body Workoutの特徴ですが、p135の別枠にこのように記載されています。
(以下引用拙訳)

The integral Difference
大抵のエクササイズはcausalボディを無視しています。多くはsubtleボディのことを忘れています。同時に3つのボディを鍛える所定のエクササイズを見つけることは極端に稀です。これがthe 3-Body Workoutのパワーです。それは本当にIntegralなワークアウトを行う凝縮された、効率的で知性的な方法です。
 その上、それはエクササイズをもっと面白くするでしょう。なぜなら、もはやあなたは単にカロリーを燃やしているだけでなく、気づきと思いやりを各々の動き、各々の瞬間に運んでいるからです。実践すればするほど、3つのボディは強くなります。それは、大きな筋肉あるいはエアロビックな強さをもつことが1つ、もう一つは自由に流れるエネルギーと、いまここの意識の深みをもつことです。(引用ここまで)


3-Bodyとは粗大(gross)、微細(subtle)、元因(causal)という3つのボディのことです。これは構造(structure)ではなく状態(state)です。これを構造あるいは段階(stage)であると考えるのは「状態と構造の錯誤」(The State/Structure Fallacy)といってマインドモジュールの中で戒められています。

そしてまた、次のように解説され、基本的な5ステップが示されています。(以下引用)

あなたの3つのボディ―元因、微細、そして粗大―それぞれを強調し、どのエクササイズをする間も、3つすべてのボディに気づきの意識と専心を持続する、少なくても一つのエクササイズを行いましょう。・・・

1. あなたが選んだ気づき/瞑想実践を通して、元因ボディの状態に入り、地に足をつけましょう。
2. 元因ボディの状態で意識的に地に足をつけたまま、選んだ微細エネルギーの実践を通して、微細ボディを活性化しましょう。
3. あなたが選んだ肉体的なエクササイズを通して、粗大ボディを強化しましょう。元因ボディの状態で意識的に地に足をつけたまま、微細ボディの状態で活性化したままでこれを行いましょう。
4. ストレッチとクールダウンを通して粗大ボディから微細ボディの気づきへと移行しましょう。
5. 座って瞑想の時間をとり、元因ボディの状態に落ち着きましょう。(引用ここまで)


このように、3つの状態を順に移行していくということ、そして元因の上に微細を乗せ、その上に粗大を乗せた三層の状態をつくるということです。そして次は粗大を手放し、重心を微細に、さらには微細を手放し、重心を元因へと移していきます。


思いました。なぜ反対ではないのだろう?と。なぜ、粗大の下に微細を敷き、微細の下に元因を敷いて3層にしないのか?そして元因を切り離し、次に微細を切り離し、最後の元の粗大に戻るというプロセスをとらないのでしょうか?


このように書いた時点でなんとなく分かりました。そのように発想すること自体が悪しき習慣なのかもしれません。答えはこうでしょう。元因は不変で不動です。その元因のライトがついたり消えたりするのは本来おかしいのです。その無形の元因から、シンボルやイメージなどの形をもった微細が立ち上がります。夢見のない深い眠りから夢見の状態に入るように。そして目がさめ、有形の世界、粗大が意識の前景を占めるのです。

しかしこの時も意識の前景あるいは上層を粗大が占めていますが、その下の層には微細があり、さらに最も下あるいは背景には静寂の元因が横たわっています。ですから粗大が恒常的で、微細、元因が現れたり消えたりするというのでは本末転倒になってしまいます。ですから、元因の上に微細を乗せ、微細の表面に粗大を置く、それから最後に一番上に積んだ粗大を放し、次に微細を放し、元因だけに戻る。このとき最も背景にあった元因は前景に出ることになります。

それでは、このthe 3-Body Workoutの最初のステップを見てみましょう。(以下引用拙訳)

Step 1: Grounding in the Causal Body

2,3回深呼吸してあなた(you)に気づくことから始めましょう。純粋な目撃者、非二元の意識の状態を呼び起こす瞑想の形態(スピリットモジュールで紹介した数種類のもの)を使いましょう。例えば、以下のPoint-Out Instructionsをすばやく読んで復唱し試してみましょう。それはあなたが、非二元のすでに現前するSuchnessの状態にアクセスするのに役立つでしょう。それはあなたの最も深い自己とすべてのものの意識的なリアリティに開いています。あなたはこの瞑想へとくつろぐと同時に、あなたの経験の身近な対象と脱同一化するよう優しく言葉で導きましょう。そうしてあなたはすべての対象の目撃者として落ち着きます。この広々とした状態の中で、あなたの元因ボディを感じましょう。

Nondual Point-Out Instructions

回りの音に気づきましょう。そしてあなたの身体の知覚に気づきましょう。

あなたはこれらの音や知覚と同一ではないことに、気づきましょう。

すべての音や知覚は、本当のあなたである気づきの意識に生起している対象です。

あなたの思考、感覚、記憶、動機、そして衝動に気づきましょう。

あなたは、あなたの思考、感覚、記憶、動機、あるいは衝動と同一ではないことに、気づきましょう。

それらすべては、あなたである気づきの意識に対象として生起します。

あなたは常に現前してきた一者です。

あなたは不在であった時などありません。

あなたは常に存在してきました。

そう、「あなた(You)」に、気づきなさい。

あなたであるSuchnessに気づきなさい。

本当のあなたである一者を求めたり、探し出したり、忘れたりする、ふりをしてはいけません。


この瞑想を、あなたが望むだけ何回でも繰り返しなさい。あるいはそれをスピリットモジュールの実践のひとつと置換えてもかまいません。例えば、I AMマントラ瞑想Integral Inquiry、あるいはthe 3 Face of Spiritに。(引用ここまで)




スピリットモジュールをある程度終えてから、こちらに来てよかったです。置換え可能な実践としては、そのほかにWitnessing meditation、Big Mind、Centering Prayerがあるということですが、また機会があれば取り上げます。

次回はStep2: Energizing the subtle Bodyおよびそれ以降のステップを見ていきたいと思います。