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ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

ゴスペル・クワイアの至高体験

インテグラル理論と実践が自分にどう役立ったか」を考えていて、先週お会いしたhuman noteという団体の活動の源泉にマズローのいう「至高体験(perk experience)」があるのだという洞察は、ごく最近インテグラル理論が役立った事例の一つだとあらためて思いました。

human noteとは、関西を中心に活動する約500名の聖歌隊(クワイア:choir)です。
human noteのホームページはこちらhttp://www.human-note.com/htdocs/?page_id=13

3人の女性が事務所に来られてお話を伺ったのですが、正直いって最初は名刺交換だけして、失礼しようと思っていました。しかし普通の主婦のような方々がケニアまでいいって活動をしたり、わずか3年間で500人以上のクワイアが参加する団体にまで成長した秘訣を知りたくなったので、そのまま座ってお話を聞いておりました。

そして前々回の京都ウィルバー勉強会(この時はステート:状態がテーマ)で参加者のお一人が昔、合唱をしている時にすごく感動したことがあった、と話されたことを思い出し、この人たち、いやこのゴスペル・クワイアに参加している500人の人々を惹きつけている源泉には大なり小なりこのような至高体験があるのだ、とお話を聞いているうちにほぼ確信しました。

日本トランスパーソナル学会のトランスパーソナル研究11号に「大学生が想起した至高体験の分析」(青木 聡、尾花高志、著)という論文が掲載されており、それをみると吹奏楽や合唱、演劇という「表現」や、自然観賞あるいはコンサートのような芸術の「鑑賞」の中で至高体験を経験した人もかなり多い(大学生284人中、至高体験吹奏楽、合唱、コンサートで経験した人の小計は69人になる)ことがわかります。

青木、尾高の両氏はこの「表現」と「鑑賞」を体験に「没入」するタイプの至高体験である(もうひとつは「反転」)と分類しており、共通して「一体感」という体験の描写がみられたことを指摘しています。「境界線がなくなったような感覚があり、みんなの心が通じ合って今全体で一つになっているという一体感を感じた」「自分が音になって溶けて、みんなでひとつの音になっていた」というようなすばらしいコメントが紹介されています。

そして、体験の中に没入して「自己」を手放すと「一体感」に至る、そのような「自己」のあり方が揺らいで変化する局面で生起する体験といえるかもしれない、と書かれています。

そうです、ゴスペル・クワイアは「没入」型の至高体験の場を提供していたのです。デイサービスセンターに行っては歌い、特別支援学校に行っては歌い、ときにはそこにいる生徒やお年寄りを巻き込んで全員で歌うというスタイルを通じて、疎外感を抱きがちな人々に「一体感」というperk experienceを提供していたのです。

それならこのゴスペル・クワイアの活動は、小児がんサバイバーのQOL向上を目指す私どものミッションと整合します。

ということでインテグラル理論の「ステート(状態):states」に関しての知識が、ゴスペル・クワイアは没入型至高体験を提供しているという洞察につながり、仕事の面で新しい企画のアイデアへと役立ったのです。こんな例をウィルバー勉強会でも共有していければいいですね。