読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

どんなアテンション・スタイルをとっているかにアテンションを払う

フェーミ博士のThe open-Focus Brainを引き続き見ています。今回は配偶者や子供との人間関係への応用例を取り上げます。

以下、第7章Love is a way of Paying Attention Open-Focus Tools for Relationshipsの中のP97~P98から抜粋しました。

(以下拙訳引用)
マーチンはニューヨーク市の株と債券の仲介企業で12人の現場管理職を監督している中間管理職である。彼は仕事を楽しみ、成功していたが、家での生活は異なった物語となっていた。

マーチンは彼の家族に満足しておらず、妻や子どもといるとき慢性的にイライラしていた。

彼は家庭生活の小さな詳細の多くに過剰反応していた。彼はそれに気づいていたが、自己コントロールすることは容易ではなかった。

もし子どものひとりがドアをバタンと閉めたら、あるいは彼の道具を使って返さなかったら、必要とされる状況以上の怒りで腹が立ってしまうのだ。

彼は慢性的な背中の痛み、過剰な緊張、腹痛に苦しんでいた。これらの問題は家にいるとき、よりいっそう悪いように思えた。

彼は家ではとても不快(unhappy)だったので、毎日オフィスを出て家に帰るのを恐れ、仕事が必要とするよりも長く働いた。

彼は妄想的に妻と離婚し家族から去ることを考えた。



ある日、妻の勧めで、マーチンはニューロフィードバックとオープンフォーカスの訓練に姿を見せた。

最初のトレーニングのセッションの後、態度にわずかな変化が生じたことに彼は気づいた。イライラが減ったようだった。

家での2〜3週間のトレーニングと数回のニューロ―フィードバックとオープンフォーカスのセッションのあと、彼の生活は根本的に変わった。

彼の感情的な反応はかなり減少した。イライラすることが減り、不安は縮小した。彼の激怒は止まった。

「多かった感情の起伏が滑らかになった(The rough edge were smoothed)」と彼はいった。彼はオフィスと家庭の両方で温かさ、端麗さ、寛いでオープンな感覚を感じはじめた。

彼は今や、どのようにアテンションを払っているかに、注意を払った。
(He now paid attention to how he was attending)

そして運転している時、本を呼んでいる時、話している時でさえ柔軟なアテンション・スキルを応用することができることが分かった。

例えばもし彼が同僚と話していたなら、彼はアテンションをリラックスさせて、もっと気さくなやり方で談話をした。

株の価格が下落したと気づき、それにアテンションを払う必要があると感じれば、彼はフォーカスをナローにしたが、終了するや否や再びディフーズに戻した。

もし彼が選ぶなら、消耗感を感じることなしに時計の針がその日の終わりを告げるまで、長く働くことができた。

最も重要なことは、彼が家族とともに居たいと感じるようになったことだ。

家庭での関係は温かくなり、慢性的な否定的思考は消え失せた。

妻や子どものしたことが彼を悩ませることはもうなくなった。

彼は離婚のばかげた考えをやめた。

何年かして、マーチンは否認や逃避あるいは引き下がることなく、シンプルに彼のアテンション・スタイルをマネジメントするだけで(simply by managing the style of his attention)対処できるようになった。

彼は理解した。家庭での問題のほとんどは妻と子どもが彼に行ったことからではなく、むしろ彼らにどう反応するかということから生じた結果だったのだ。

ナロー/オブジェクティブなフォーカスのストレスに満ちた緊急のモードでずっと生活することは、彼を慢性的に過剰反応にし、特に彼が最も大切にしてきた人間関係に対してもダメージを与えてきた。

愛でさえ、私たちがどのようにアテンションを払うかに左右されるのだ。
(引用ここまで)

登場人物のマーチンはタイプや状況が私に似ているなと思いました。じわじわとバセドウ病を発病しつつあった15年ほど前はまさにこんな感じだったように記憶しています。

甲状腺ホルモンの過剰分泌とともに言動も過剰反応しておりました。

今回引用した文章のなかで、He now paid attention to how he was attending.という文が印象的でした。また同様にsimply by managing the style of his attentionというところもそうです。

私は昔、リーダーシップ理論のなかの状況対応型リーダーシップ理論というものをとても好んで使った時期がありました。緊急時や平穏時、部下の発達度などの状況に合わせてリーダーシップ・スタイル(指示型directing、コーチ型coaching、援助型supporting、委任型delegating)を柔軟に変えるべきであるという理論です。

今回示されているアテンション・スタイルの使い方は、まさに状況対応型アテンション・スタイルの理論であり、親密な関係から職場の人間関係まで良好な関係を築くために、どのようにアテンション・スタイル(narrow, diffuse, objective, immersedの組み合わせ)を使い分ければ良いかが示されています。

シンプルですが、すばらしいですね。

そして不適切なリーダーシップ・スタイルがチームの生産性を低迷させ人材の育成を阻害するのと同じように、不適切なアテンション・スタイルの採用が、人間関係や、パフォーマンス、健康状態にまで影響するのだというのが本書の主旨です。


ではどのようにして適切なアテンションをとればよいかというと、まずそれぞれのアテンションの特徴を理解することが必要です。

しかしまあ簡単にいうと、私たちは現代の生活習慣からナロー/オブジェクティブのスタイルを慢性的に取りがちであること。

したがってその対極にあるディフーズ/イマーストのスタイルを心掛けるようにすべきである、というのが基本だろうと思います。

イメージはライオンです。獲物を狩る時のナロー/オブジェクティブ、狩りが終わったあとのディフーズ/イマーストへの素早い切り替えです。

切り替えがうまくいかなくなると、何かが故障してきます。私の場合はそれが甲状腺ホルモン分泌過剰だったということです。


いま、あなたはどんなアテンションを払ってこの文章を読んでいますか?

「いま自分がどんなアテンション・スタイルをとっているのかに、アテンションを払うこと」

日常のなかに染みこませて行きたい習慣です。