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ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

No Problems in the Nowの2つの意味

前回の続き、P15 No Problems in the Nowからの以下引用です。

エックハルトが繰り返す啓示的な教えは、今この瞬間には(in the Now)どんな問題も存在しないということだ。

多くの人をよく困惑させるこの教えは、Nowの異なる二つの意味に照らして理解される。

一つ目の明確なNowの意味は、今この瞬間(present moment)ということだ。

エゴの意識は、present momentにおいてそれが生きることは極めて困難であるのだが、たいていの時間を、次の瞬間や未来を予期することに費やし、

何かが「悪くなる」ときや、人生が「問題」を提供するときに、かえってますますpresent momentから逃げ去ろうとする傾向がある。

心は本能的に、問題として受け取ったものを未来へと投影し、さまざまな未来に起こりうる破局を想像する。

この人間の習性はThe Motherによって述べられてきた。

もし動物が、事故や病気で苦しむなら、この苦しみはそれを観察しないという事実によって最小限に抑えられます。

それを意識の中で未来へと投影することはなく、その病気や事故について想像することもありません。

人は、一体何が起こるのだろうか?というこの絶え間ない悩みを生み出します。そして彼の苦しみの唯一のものでないとしても、その悩みは主要なものなのです。

この客観視する(objectivising)意識によって、不安、痛々しい想像、悩み、苦しみ、未来の破局の予想が生じます。

その結果、たいていの人は、そのことに少しも気づいていませんが、誰もが知っているように、絶え間ない苦しみに生きることになるのです。


人が未来の代わりにNowに生きるとき、すべての問題は消えるとエックハルトは言う。

悪くなることは全て単にチャレンジとして理解され、それに応じるためにふさわしい行動をとる。


エックハルトがNowに与えるもうひとつの関連する意味は、真の意識(true consciousness)の状態、現前の状態(the state of Presence)である。

そんな状態においては、問題は全く生じない。The Motherが書き記しているように。


もし人がtrue consciousnessに到達したなら、もはや解決すべき問題は何も存在しません。

あなたがなるべきものやなるものもありませんし、知るべきことや知ることもありません。

そしてあなたのすべきことも、するためにもつべき力も必要ありません。

そして自然に、いわゆる困難と呼ばれるものは全てたちまち消え去るようになります。
(引用ここまで)



このin the Nowの一つの目の意味は、以下のブログで書かせていただいたNowの意味です。

Milton's Secretと「二本の矢」 - ウィルバー哲学に思う


「ミルトンズ・シークレット」でおじいさんが言った方のNo Problems in the Now の意味であり、知的に理解できるものだといえます。

余談ですが、「大切なのは過去でも未来でもなくこの一瞬なのだ」と最初(?)に言った人は実は4世紀に生きたアウグスティヌスだったのだということを、甲田烈さんの「手にとるように哲学がわかる本」で知りました。

アウグスティヌスが「時間論」の中で「思い出すから過去は存在し、予期するから未来が存在する」ことを言っていたのです。

それはさて置き、もっと重要なのはin the Nowの二つの目の意味です。

それは、the Motherのいうtrue consciousnessであると著者のDalalは言っています。

このtrue consciousnessは知的に頭で理解できるものではありません。

それを経験するために、エックハルトのいう「ポータル(portal)」を通ることが手段として提示されています。ポータルにはいくつかの種類があります。

「ニューアース」P225にはこう書かれています。
「時間とは人生の水平軸、現実(reality)の表層だ。だが人生には深さという垂直軸もある。垂直軸には現在という瞬間を入口(portal)として近づくしかない。」

エックハルトのいうポータルとはなんでしょうか?次のブログでそれを取り上げたいと思います。