ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

不快によってむしろ静穏、明晰、慈悲を誘発させる

「経験に対する反応や解釈は選択することができる」という題目で文章を書こうとして何日も過ぎてしいました。そこで前半部分と後半に分けることにします。今回はその前半です。

ミンゲールのJoyful WisdomのP9にこうあります。(以下引用拙訳)

 

私たちがこの実験でするように求められたことは、一定の瞑想実践と通常の状態あるいは自然な状態にただ心を休ませるだけの時間を交互に繰り返すことだ。

3分間の瞑想のあと3分間休憩する。

そして瞑想している間、私たちは全く不快なサウンド、例えば女性の金切り声や赤ん坊の泣き声などを聞かされた。

実験の目標はこれらの煩わしい音が瞑想経験者(累積1万~5万時間)の脳にどのように影響するのかを測定することだ。

それらは集中した注意の流れを妨害するのだろうか?イライラや怒りと関係した脳の領域が活性化するのだろうか?

おそらく、どんな影響も受けないのではあるまいか。

事実、その研究チームがこれらの騒がしいサウンドが流れたとき、母性愛、共感、その他のポジティブな心の状態と関係する脳の領域の活動が、実際に増大した。

不快感が静穏、明晰、そして慈悲の深い状態を誘発したのだった。

この発見は一言でいうと仏教徒の瞑想実践の主要な恩恵のひとつの真髄を表現している。

困難な状態(difficult conditions)では混乱した感情をともなうのが常であるが、彼らはそうした困難な状態を人間の潜在能力を解き放つ機会として利用しているのだ。

多くの人々では、この変容的な能力、あるいはそれが拓く広々とした内なる自由を発見することはない。

日々われわれの前に現れる内外の困難にシンプルに対処するのに、ほとんど時間は要らない。

「心のステップバック(mental step back)」と呼ばれる振り返り(reflection)をするだけだ。

それは日々の出来事に対する習慣的な反応を評価し、他の選択肢もあるのではないかと考えることなのだ。(引用拙訳ここまで)



今回のブログは次の一文を紹介したくて書いたようなものです。

Unpleasantness had triggered a deep state of calmness, clarity, and compassion.

不快が静穏、明晰、そして慈悲の深い状態を誘発したのだ。



いや~、すごくないですか。

そのような煩わしい音に「動じない」という反応は想像がつくところですが、それを超えて「明晰」や「慈悲」の状態にまで変換させるとは…。

正直いって驚きました。

これは瞑想の累積経験時間が1万から5万時間、年数にして15年から40年の経験者がボランティアとして協力したと書かれています。

1万時間には1日1時間の実践としても27年かかる計算です。


そして先ほど同じ実験に関する記事をiAwakeの2010年5月7日の記事に見つけました!
http://www.iawakeblog.com/2010/05/meditation-related-brain-research-and.html

そしてここでは興味深いことにガンマ波のことが書かれています。長期瞑想経験者にはガンマ波の「スパイク」が顕著に見られるというのです。

アルファ波は8Hz~12Hz、シータ波は4Hz~7.5Hz、デルタ波は5Hz~3.5Hzであるのに対して、ガンマ波とは40Hz~99Hzの波長の脳波をいいます。

通常の意識状態で多く見られるベータ波(13Hz~39Hz)よりもむしろ高い周波数です。
http://www.iawakeblog.com/2010/05/understanding-and-influencing-your.html

ガンマ波では明晰性や慈悲の特徴があらわれると記載されています。

iAwakeにはDigital Euphoriaというサウンドがあります。そのtrack3はガンマ波をターゲットにしたもので、私もよく聴いています。

Digital Euphoriaはfreeのヴァージョンはこちらで聴けます。
http://www.youtube.com/watch?v=3Eg_sNSqxEA

また、ガンマ波の説明はこちらでも見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=mgDHH58Ex_o&feature=watch_response


iAwakeのプログラムを利用することで長期間を要する実践時間を短縮できることが期待できそうです。