ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

概念としての自己をPRしている自分を見て笑おう

今回みていくのはACT(アクセプタンスコミットメントセラピー)の「観察者としての自己」です。ウィルバーのいうWitnessであり、目撃者、あるいは観照者と訳されています。このブログでは基本的に目撃者と書いてきました。これは、清水博先生のいう場所中心的自己に共通するものがあります。

 

その辺りを見ていきたいと思います。

 

まず、今回作成したハンドブックでは、「観察者としての自己」を以下のようにまとめました。

 
ACTその3 観察者としての自己 「私は愚かだ」、「私には価値がない」、「私は恐がりだ」などの自己イメージ(概念化された自己)は、自分がくだしてきた自分への評価にすぎません。
 
あなたの意識に浮かんでは消えて行く思考、感情、記憶、衝動に気づくこと。青空に浮かぶ雲のように。
 
思考という雲はじっと固定しているかのように見えますが、微かに形を変え流れていることに気づきましょう。感情という雲、衝動という雲が、意識の青空の中でわき起こっては流れ消えて行くことを見ます。
 
この雲を見ているものはいったい誰でしょうか?
 
あなたは身体を見ることができます。であるからあなたは身体そのものではありません。
 
同じようにあなたは判断や評価といった思考に気づき、思考を対象として見ることができます。であるからあなたは思考ではありません。
 
あなたは不安や落ち込みといった感情に気づき、感情を見ることができます。であるからあなたは感情ではありません。
 
あなたは欲しい、逃げたいという衝動に気づき、それを対象として見ることができます。であるからあなたは衝動ではありません。
 
思考ではなく、感情でもなく、記憶でもなく、衝動ではないあなたとは、いったい誰なのでしょうか?そう、それが「観察する自己」です。「観察する自己」として安らぎましょう。
 

このブログの検索欄に「目撃者」と入れて検索すると相当な数の小稿が並びました。そのいくつかを以下に紹介したいと思います。

 

場所中心的自己(2006年7月30日) ケンウィルバーの目撃者と、清水博先生のいう場所中心的自己、宮本武蔵のいう「観の目」に横糸を通した小稿です。

場所中心的自己 - ウィルバー哲学に思う

読み直してみて、「普遍的なものは無を抱くものです」という表現が印象的でした。

 1分間自己革命と目撃者の共通点(2007年01月13日) ビジネス書のロングセラー「1分間マネージャー」の共著者であるスペンサー・ジョンソンによる「1分間自己革命」で紹介されている「内観の力」と、ウィルバーのいう目撃者を取り上げた小稿です。1分間自己革命と目撃者の共通点 - ウィルバー哲学に思う

「自己観察、つまり内観の力は、静寂の瞬間からはじまる。この場合はそれが1分間だ。これだけで、1つの道が開けてくる。」と書かれています。 またウィルバーの「わたしが目撃者に落ち着いている時、この無形の「私-私」に落ち着いている時、明らかなのは、わたしはこの家の中にはいない、この家はわたしの意識の中にあるということである。」という、すばらしい表現も「存在することのシンプルな感覚」から引用しています。

 「空」とキャンバスと本当の自分(2008年11月30日) その頃に自分なりのイメージとして定着してきつつあった「自分とはキャンバスだ」という直感を、龍樹の「空」についてのシンプルな表現を引用しながら、書かせていただきました。
「空」とキャンバスと本当の自分 - ウィルバー哲学に思う
 ここでいうキャンバスこそACTの「観察者としての自己」ではないかと思います。
 心を鏡のように用いる(2009年03月11日) ウィルバーが目撃者を鏡の喩えを使って解説しています。荘子のいった「至人の心を用いるは鏡の如し」の引用はすばらしいですね。
心を鏡のように用いる - ウィルバー哲学に思う
 まさに大円鏡智です。
僕って何? ~わたし観の転換~(2009年4月11日) ここに書いている「あなたはどのような人ですか?5分間でPRして下さい」と質問されて答える自己がACTでいう「概念としての自己」でしょう。
僕って何? 〜わたし観の転換〜 - ウィルバー哲学に思う

いま就活で頑張っている若い皆さんは「概念としての自己」をPRしているのです(笑)。そう考えればリラックスできますね!

 過去のブログから「目撃者」をキーワードに検索して、古い順にみているのですが、ここまで書いてまだ2009年の4月です。まだ先が長そうなので今日はここまでにしておきたいと思います。 今日のタイトルは、就活の学生に向けの応援フレーズです。1分間自己革命の視点(雲の上で面白がって見ている神様の視点)を入れて
 概念としての自己をPRしている自分を見て笑おう
にしたいと思います。企業の人事担当者との面接で焦っている時、こうした視点をもつことで、どうかリラックスして頑張ってください。

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