ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラーなど、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

脳科学で証明されるマインドフルネスの効果

昨日NHKで放送されたサイエンスZEROに熊野宏昭氏(東京大学博士(医学)で現在早稲田大学人間科学学術院教授、応用脳科学研究所所長)が出演し、マインドフルネスの最近の科学的な知見について解説がありました。

 

番組では、まず仕事の効率化やストレス低減、集中力向上などの効果があるとして昨今はビジネスの現場で取り入れられる動きが出ているとして日本のYahooが紹介されていました。すでに多くの方がご存知のようにグーグルやインテル、フォードなど世界の一流企業でも研修に取り入れられています。

 

次に、マインドフルネスが、うつ病や不安症、パニック障害などのストレス性の疾患への対処に役立つとしてイギリスの医療現場での適用の様子が紹介されました。

 

うつ病については再発防止に特に効果があるとしてイギリスで482人に2年間の追跡調査をし、マインドフルネスの実践者のグループと抗うつ薬の投与を継続したグループを比較、抗うつ薬投与の群よりもマインドフルネス実践群の方が、効果が上回ることが示されていました。

 

うつ以外にも特に「不安」には、非常に効果が大きいとコメントされていました。

 

注意事項としてうつ病は症状が出ているときはかえって状態が悪くなることがあるため、担当医と相談して取り入れてくださいと話されていました。

 

そして次に、マインドフルネスによる脳の変化が示されました。カーネギー・メロン大学のデビッド・フレスウェル氏は、35人に対して3日間のマインドフルネスのプログラムを実行し、リラックスだけのプログラムを受けた人たちと比較しました。

 

2週間後に脳の状態をfMRIで調べると、マインドフルネス実践者は脳の前頭前野にあるdlPFCの活動が活発になっていることが確認されました。

 

これは8月11日のブログ「生きかた知縁カフェはじめます」のコメントで私が取り上げたあのdlPFCです。慢性腰痛のある人の多くはこのdlPFCの衰えに原因があることが分かっています。(したがってdlPFCの活動を高めれば効果があることも)

 生きかた「知縁」カフェ、はじめます! - ウィルバー哲学に思う

マインドフルネス実践者ではこのdlPFCの活動が高まり、デフォルト・モード・ネットワークと一緒に動くことで、ストレスの低下につながっているのではないか、と解説されていました。

 

そのあと、マインドフルネス(瞑想)の体験ということで、女優の南沢奈央さんとサイエンスライター竹内薫さんが目をつぶって10分ほど実践しました。

①呼吸に注意を払います。

②雑念に気づき、呼吸に注意を戻します。

③注意のフォーカスを広げていきます。

④いろいろなものを同時に(五感で)感じます。

注意のフォーカスを広げていくところは、当ブログで取り上げている「フェーミ博士」のプログラムがかなり参考になるはずです。(よろしければ右のカテゴリーから参照してください)

 

そしてさらにハーバード大学のサラ・ラザー氏の「マインドフルネスによって脳の構造の変化が起こる」という研究結果が示されました。

 

毎日45分、8週間のプログラムを実践した人は海馬の灰白質が5%増大しました。これは新しい能力を身につけたときの変化に匹敵すると、サラ・ラザー氏はいいます。そして逆に扁桃体は5%減少していました。ストレスに対する過剰な反応が抑えられていることを意味しています。

 

うつ病の人は通常これとは反対に、「扁桃体の動きが過剰になり、海馬が減少する」傾向があります。マインドフルネスの実践により、これと全く反対の脳の構造変化が起こっているのです。

 

最後に慢性炎症に関わる遺伝子であるとされているRIPK2の活動が、わずか1日のマインドフルネス実践で下がるという研究結果が紹介されました。この遺伝子の活性は動脈硬化などに関係していると考えられているそうですが、プログラムを実践してわずか8時間後には大きく下がったグラフが示されていました。驚きです。

 

熊野さんが上手に「雑念」の解説をされていたのが印象的です。雑念に飲み込まれる様子を、雑念の雲に体が入ってしまうイラストで表現していました。マインドフルネスとは、この雑念の雲に気付いて外に出ることだと話されていました。マインドフルネスは集中とかリラックスとして紹介されることが多いのですが、実はこの「気付く」ことの方が大切なのです、と力説されていました。

 

まさにその通りだと私も思います。私が当ブログで「風船モデル」と呼んでいるものに大変近いと感じました。私たちは日ごろ無意識に何かを考え、いつのまにかその思考のコンテンツにどっぷりつかってしまっているのです。これは漫画でよく表現される風船のような「吹き出し」の中に頭がすっぽり入ってしまった状態です。大切なのは「おーとっと」「またいつの間にか入ってしまっていた」と気づき、吹き出しの風船から頭を外に抜くことなのです。

「無意識の回避」から「意識的な受容」へ - ウィルバー哲学に思う

風船モデル - ウィルバー哲学に思う

 

このほかにも本ブログではマインドフルネスに関連したことを相当数書いてきましたので是非参考にしてください。(これも右のカテゴリーから参照できます。)

9月17日からスタートする知縁カフェでは、マインドフルネスの研鑽法もお伝えします。教室などもたくさんできているようですが、費用もかかるようですし、教えている人がどれくらい分かっているかどうかも疑問です。十分自学できます。少しずつ体得し感覚を身につけていきましょう。それでは今日はこの辺で。