ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

フローの一条件として「接戦で〈今〉にあり続ける」こと

 

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昨年の10月から卓球を再開して1年が経ちました。

最近になって「これはフローかも??」と思える瞬間があったので、今回は「フロー」をテーマに書いてみたいと思います。

 

フローについては何回かこのブログで取り上げています。

特に2010年の8月30日のブログ『フロー状態とAttention』ではチクセントミハイの『フロー体験入門―楽しみと創造の心理学」を引用して次のように書きました。

 

このチクセントミハイ教授の素晴らしいところは、縦軸にチャレンジの高低、横軸にスキルの高低をとって、フローが高チャレンジ、高スキルの場合に起こりやすいことを洞察したことだと思われます。

(以下引用)

つまり目標が明確で、迅速なフィードバックがあり、そしてスキル(技能)とチャレンジのバランスが取れたぎりぎりのところで活動している時、われわれの意識は変わりはじめる。そこでは、集中が焦点を結び、散漫さは消滅し、時の経過と自我の感覚を失う。その代わり、われわれは行動をコントロールできているという感覚を得、世界に全面的に一体化していると感じる。われわれは、この体験の特別な状態を「フロー」と呼ぶことにした。なぜなら、多くの人々がこの状態を、よどみなく自然に流れる水に例えて描写するからである。

・・・

フローは、スキルがちょうど処理できる程度のチャレンジを克服することに没頭している時に起こる傾向がある。最適な体験は、ふつう、行動能力〔スキル〕と行動のために利用できる機会〔チャレンジ〕とのすばらしいバランスを必要とする。もしチャレンジが高すぎて失望すると、心配し、徐々に不安に移行する。もしチャレンジがスキルに比べて低すぎてくつろぐと、退屈してしまう。もしチャレンジもスキルも低いと分かったら、人は無気力になるだろう。しかしチャレンジとスキルが高いところで一致したら、ふつうの生活から離れたフローを提示してくれる、深い没頭が起こるだろう。(引用ここまで)

 

 

その通りだと思います。そして今回、自分の体験を踏まえるなら、ミハイの言う「高チャレンジ、高スキル」の状況に加えて、「接戦で〈今〉にあり続ける」ことが、もう一つの条件、しかも極めて重要な条件なのだ、と確信しました。

 

「しまった!」「チャンスだったのに・・・」

「こんなミスしていたら勝てない・・・」

「またミスした・・・」

「もしかすると逆転されるのでは・・・」

「また大事なところでサービスミスしてしまった」

「油断した!」

・・・etc.

 

「ミスしたことの後悔(過去)」と「負けるかもしれないという不安(未来)」に囚われて、「心ここにあらず」のマインドレスな状態に陥るとますます悪循環していきます。

「肝心なところでいつもそうや」等といった「悪魔の囁き」が聞こえ、身体もボールもコントロールできなくなります。

 

焦り、力み、自己嫌悪、注意力散漫・・・

 

フローと全く反対のメンタリティです。

 

しかしこんな時こそ、そうした「悪魔の囁き思考」に気づくことが大切です。そうしたネガティブな思考が浮かんだ時、胸がキュッとなったり、心臓がドキンとなることがありますが、むしろそれを「気づきのシグナル」として利用しましょう。

 

心がワンダリングし、過去や未来に彷徨いかけていることに気づき、意識の背景である「今ここ」、集中すべき「この一本」に心を戻します。交換神経の活性化で分泌されたホルモンをむしろ味方につけるのです。

 

まずはそのままプレーを続けずに、囚われている「悪魔の囁き」から解放されましょう。

「おーとっと」と我にかえり、「フウッ」と大きく息を吐きます。焦ってサーブをしてはいけません。

腹式呼吸を2、3回します。

肩の力を抜き、肘と手首を軽く揺らします。

力を入れなくてもしっかり回転の効いたサーブが可能であることを思い出します。

 

相手との得点差が開いてしまったことは、逆に奇跡を起こすチャンスです。

ゲームは最後まで分からない。

だんだん追いついていくと何が起こるかわからない。

アドレナリンを味方にして気力へと変容させ、体中にみなぎらせます。

同時に副交感神経にも活躍してもらいリラックスしましょう。

気づいたとき、得点はいつのまにか追いついています。

あなたはゾーンに入っています。

勝ち負けはあまり気になりません。

思い切りのあるプレーを楽しんでいます。

身体が躍動し、ボールが自然に流れます。

 

追いつかれた相手のメンタリティとは、もはや格段の差があるでしょう。

 

〈今〉にあり続けることが、フローをもたらす一つの条件なのです。