ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

認知的フュージョン

正しく怖れよ!有益な思考と無益な妄想

思考がお化けをつくり出していないか? それは、あらぬ妄想だ。 言葉と記憶によりサピエンスは食物連鎖の頂点にたったが、 今ここに危機はないにも関わらす、心は闘争してしまう。 サピエンスの背負った苦悩である。 コロナから「二本の矢」を受けてはならな…

見せかけの不運と、無「本質」化

この1か月ほど前に、ネガティブな出来事があり、その対応のため少々苦慮してきた。 しかし、そんな中で、ジョン・レノンの息子であるショーンがNHKの番組『ファミリー・ヒストリー』に出演していた時に話した「ママはよく、これは見せかけの不運だってい…

本質の無化から、無「本質」的分節へ

前回に引き続き井筒俊彦の『意識と本質』を見ていく。 本論に入る前に、井筒の使用する「分節」あるいは「無分節」ということばであるが、『意識の形而上学~大乗起信論の哲学』のなかでこう解説されている。 仏教古来の術語に「分別」という語があって、ほ…

「実存としての自己」を直覚させる「あなたはあなた」

「かぶき者慶次」という時代劇を見た。関ケ原の戦いの後、石田三成の子を前田利家の甥にあたる前田慶次がかくまって、上杉家の領地である米沢の地で秘かに育てているという設定である。前田慶次は実在した人物だが、石田三成の子はドラマでの名は新九郎とい…

生きかた「知縁」カフェ、はじめます!

勉強会「生きかた知縁カフェ」第1回(9/17)を開催します。 知的好奇心が強く心理哲学的なアプローチと脳科学など最新の科学を融合させたい定年前後のシニアの方々の参加を想定していますが、「生きかた」に関心のある方ならどなたでもOKです。 NPOの審査や…

必ずしも意図していないものを読み解くという楽しみ方

脳内ポイズンベリーという映画を観た。 若い男女の三角関係がストーリーの恋愛映画で、映画館も若い人が多く、少々気恥ずかしい感じがした。 にもかかわらず、わざわざ見に行こうと思ったのは、主人公の脳の中にポジティブ、ネガティブ、衝動、記憶、そして…

心の形成物≒ペインボディ≒認知的フュージョン

五蘊(ごうん)、とくにその第4である「心の形成物」(mental formation)の相互依存性ということを考えているうちに、ティクナット・ハン師のいう「心の形成物」とエックハルト・トールのいう「ペインボディ」、そしてさらにACT(アクセプタンス&コミットメ…

ありのまま、起こるがまま、そして「あるがまま」

「あるがまま」とは、「ありのまま」、および、「起こるがまま」を含んで超えているのだと思いました。 まず、「ありのまま」とは、何でしょうか。 それは、ベールを通さず、無濾過のリアリティを見ることです。 私たちヒトは、「関係づける能力」を発達させ…

貼りつけたレッテルをはがし「ありのまま」をみる

前回に引き続きACTのコアである6つのプロセスについて、過去のブログとの関連を見て(ウィルバー、ACT、ティクナットハン、エックハルト・トール、ミンゲールetc)に共通する横糸を通してみたいと思います。今回はその2つ目、脱フュージョンです。 脱フュー…

曇りなき眼で見つける青い鳥

前回のブログで「言葉で言い表せないものの価値を見出す」と書いた。そしていろいろと思いを巡らせるうちにやっぱり「青い鳥」ではないのかとの思いが強くなり、メーテルリンクの「青い鳥」(新潮文庫)を購入して読んでみた。 ご存じの通り、クリスマスイブ…

脱フュージョンで出来事と評価を切り分ける

ACT(アクセプタンス&コミットメント セラピー)では、 ・アクセプタンス ・脱フュージョン ・文脈(観察者)としての自己 ・今この瞬間との接触 ・価値 ・コミットメント の6つを主要な構成要素としている。(こころのりんしょうa la carte 2009.3 p81) …

条件づけの要因、「嫌悪」を「哀れみ」へとシフトする

今朝、目が覚めて頭に浮かんだことは「怒りを哀れみに変えたらよい」という考えでした。 このことはミンゲールの本を読みはじめてから、折に触れ思うようになっていたことではありましたが、昨晩眠る前にティクナットハンの「禅的な生活のすすめ」を読んでい…

自作の苦(pain as self-created)

ミンゲールのJoyful Wisdomの中に「二本の矢」に通じる話があったので紹介したいと思います。(以下、P46~引用拙訳) Milton's Secretと「二本の矢」 - ウィルバー哲学に思う 私たちはコントロールできない経験の感受に関してはたくさんの選択をもたない。…

現実を変えるのでなく現実に対する洞察を高める

どうも自分自身の調子が悪いと、無意識に現実を変えようという方向に心が働いてしまう傾向があります。何とかならないかなあ。どうすればいいかなあ?もっと…。というようにあれこれといつのまにか思いを馳せてしまいます。 そのような方向に心が働くのは、…

Absorptive−Witnessingその2、主客転倒せよ!

前回の続きです。 アイデンティティの最も高いStageであるAbsorptive−Witnessing段階の特徴の二つ目は、「目撃認知へのアクセスの増加」(Increased Access to Witnessing Cognition)です。P153のこの節を読み、これと関連したP77の「認知の発達ライン:ポ…

風船モデル

感情とどう付き合うか?を考えていて、イメージとして出てきたのは風船です。 話した言葉、口に出した会話を図で示す場合に吹き出しが使われますが、心の中で思ったことなどの吹き出しには泡型の吹き出しが使われます。 例えば不安のようなネガティブな感情…

認知療法の自動思考

配偶者や子どもなど大切な家族との死別をきっかけにうつ病を発病することがあります。そしてうつ病になった人は自殺を企てることが少なくありません。うつ病にならないように、そしてうつ病になっても回復させる治療法の一つに認知療法というものがあること…