ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

Waitingに気づく、そして存在することのシンプルな感覚

引き続きエックハルト・トーレのいうThe Egoic SelfをDalal博士の解説でみて行きます。

Looking to the Next Moment―Waiting 

いつもwantingとneedingの状態にある必然の結果として、常に未来に生きる傾向をもたらす。

人は、今この瞬間に喜びや満足を見出すことができない。そして引き続き次の瞬間や、欲望の実現が叶うと信じる未来に関心を向けるのである。

今この瞬間は、単なる手段あるいは未来への通り道としてしか考えられないものとなる。

未来とは決して到達しないものなので、人は気づいてはいないが、いつも待ちの状態(continual state of waiting)で生きているのだ。

エックハルトが話し始める前、聴衆の中で待ちの状態を感じるとき、おそらく彼は皆に広がる待ちの態度にコメントすることによってトークを開かれた機会として活用している。

それについて彼はいう。

「あらゆる種類のウェイティングによって、あなたたちは無意識に、居たくはない今ここの場所と、居たいと望む場所である投影された未来との間に、内なる葛藤を作り出しているのだ。」

このことは、あなたの人生の質を著しく低減させる。それは現前を失わせることによって(by making you lose the present)である。

Waiting、それはimpatienceの微妙な形態だが、それはimpatienceより浸透しているが、より認識されていないものだ。

エックハルトは、通常の意識を特徴づけ、存在することの喜び(the joy of being)を損なうwaitingの状態(それは気づきにくいがよく浸透している)について話すが、彼は私が出会った中で特にそのことに言及した最初の指導者だ。

この深遠な心理学的洞察が、私にエックハルトのメッセージ ”Just be and enjoy being” を正しく評価することを可能にした。

それはthe Motherが感動的に言った存在の歓び(delight)を私に思い出させる。それは宇宙のあらゆるもの、生きとし生けるものすべてに現前しているのだと。

(そしてThe Mother, Question and Answersからの引用が以下のように続く。the Motherの元の名はMirra Alfassa。シュリ・オーロビンドが弟子ではなく同士として扱ったという。1952年Sri Auribindo International Center of Educationを建てた)

There comes a time when one begins to be almost ready, when one can feel in everything, every object, in every movement, in every vibration, in all the things around―not only people and conscious beings, but things, objects; not only trees and plants and living things, but simply any object one uses, the things around one―this delight, this delight of being, of being just as one is, simply being. And one sees that all this vibrates like that. One touches a thing and feels this delight.

・・・(以下20行ほど続きますが省略します。引用ここまで)


このdelight は、エックハルト・トーレが絵本Milton's Secretの中で描いているlight bubbleと同じものであることが分かります。

Inner Body と Light Bubble - ウィルバー哲学に思う


存在することの喜びをwaitingが損なうのだと書かれています。

アートマンを求めようとする私たちの衝動は、その代替物を求めるというアートマンプロジェクトとして具現化しますが、それは代替物であるが故に決してアートマンに到達できません。

むしろ遠ざかって行くのです。

お金や名声に対する強迫観念は、青い鳥が今ここではなく、そこにいるはずである、という幻想が生み出したものです。

未来にフォーカスするwaitingという心理的傾向に気づくこと、それが「存在することのシンプルな感覚」へのひとつの鍵となりそうです。