ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、アドラー、ポジティブ心理学など、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。

Integral Psychograph 統合的なサイコグラフ

ウィルバーのいう発達ラインについては、インテグラル・スピリチュアリティの中でいくらか解説されていますが、Integral Life Practiceではそれを5つの主要なラインに絞って、縦軸に3つのレベルを示し、ラインを棒グラフで表示したものをIntegral Psychographとして説明している部分があります。詳しく読んでみて、これは使える!(Psychographサイコー!?)と思いました。

まず、インテグラル・スピリチュアリティより進んだ点は、ラインのタイプについてP85で以下のように4分類されその性格が整理されています。(以下拙訳)

ラインのタイプ
・ Cognitive  認知のライン(他の成長にとって十分ではないが必要)
・ Self-related 自己関連のライン
      (例えば、エゴ、欲求、モラル、アイデンティティ、価値観)
・ Talent 才能のライン(音楽、数学、視的空間認識、運動能力など)
・ Other important line 他の重要なライン
 (spiritual、美学、emotional、pschosexual、interpersonal )

 発達論の研究者たちによって確認された多くのラインとストリームは、これらの主な四つの領域にグループ化される。
1. 私たちは認知のラインをそれそのものの領域として取り上げた。何故なら研究はそれが視点を取ることのできる粗いキャパシティを供給するものであることを示しているため。それは大半の他のラインの成長のために「十分ではないが必要な」ラインなのである。このことはそれ(そしてそれ故ILPのMindモジュール)を究極的に重要にする。認知のラインが他のラインに対して十分ではないが必要なラインである主要な理由は、それをするために、それを感じるために、それと同一化するために、それを欲するために、そしてそれをケアするために、あなたが何かに気づいているべきであるということなのである。
2. 自己に関連したラインあるいはストリームは特に自己と関連する。その欲求、その価値、そのアイデンティティ、その発達と関連したラインである(意識の主要なウェイブを通じて)。多くの自己関連のラインはそれぞれ異なるが、それらはまた緊密に関係している。一人の人の多くの自己関連ラインは意識の同じレベルにタイプ的に近い。
3. Howard Gardnerは言語学、空間認識、数学、音楽、運動知性のような複合的なtalentラインあるいは知性を確認した。talentラインは相対的に互いに独立して発達する。このことは、あるラインが、芽を出したばかりでも、そしてまだ活動休止中でも、その他のラインのいくつかは満開の花を咲かすことができるということを意味している。
4. ある一定のその他の重要なラインは、自己関連ラインのなかにはリストアップされないが、全般的に成熟するためには、talentラインよりむしろ中枢的(重要)である。それはスピリチュアル、美的、感情、そして人間関係の発達ラインである。(拙訳ここまで)


そしてこのような各ラインのタイプを念頭に置きながら、統合的なサイコグラフについてp83から次のように紹介されています。(以下拙訳)

 

AQALはレベルとライン(あるいはウェイブとストリーム)を結合し、私たちにより包括的、調和的、そして精密な、発達の全てを含めた全体の眺望を与えてくれます。個人においてレベルとラインの関係を見るのに役立つ道具としてIntegral Psychograph(統合的なサイコグラフ)があります。
 Integral Psychographは5つの重要なラインと3つのレベルを通して一様でない発達の有様を描写することによってレベルとラインのあいだの関係を説明します。
 84ページの図表はいくつかの他のサンプルを表しています。これらはどんな堅苦しい種類の方法で見られるということを意味するのではなく、(思い出してください。レベルとラインは実際にはウェイブやストリームのような流動体であったことを)それらは、私たちにいたるところ全ての発達を、簡単なスナップショットで概念化する方法を提供してくれるのです。当然、どのグラフが見せることができるよりも、それは常にもっと複雑なものです。しかしそれが人間の発達の多くの微妙なニュアンスとともに働き始めるとき、定位置の大きな絵の眺望は、私たちを途方もなく助けてくれるでしょう。
 すべての統合的なサイコグラフは高低の、強弱の、豊富と(時には悲惨な)欠損の、異なったジグザグです。このことは、私たちみんなは事実上、不均一に発達したのだということを、つきとめるのに役立ちます。そうして、私たちは一つの分野で偉大なので、他の全ての分野でも偉大にちがいない、と考えることを防いでくれるのです。通常、真実に近いのは反対のことです。ビジネスリーダーより、スピリチュアルティーチャーより政治家は見事に機能停止(crash)しています。なぜなら、かれらはこれらの基本的な現実を理解しそこなったからなのです。
 あなた自身のサイコグラフに気づいていること、より統合的に整理(informed)された自己像、自己理解をはぐくむことは、他の人と同様、あなた自身の強みと弱みをもって仕事をする上での最も良い道、を選ぶ自由(そして知恵)をもっと提供してくれます。実際、あなたはILPを、あなたのサイコグラフを基礎にしてカスタマイズすることができます。
 一つのシンプルな戦略は、あなたの最も高いライン(あなたの強みを梃子にするため)と最も低いライン(あなたのもっとも制約のある弱みを緩和するため)に焦点を合わせることです。特別な注意を一つあるいは二つのラインに向けることで、(そこはあなたが最も秀でており、偉大な潜在能力を広げられるところ)あなたはもっと十分にあなたの深い贈り物を世界に提案することができます。あなたの最も弱いラインに実践のエネルギーを向けることは、潜在的に弱まっている問題点を克服するかもしれません。それは最も高い意図を達成しようとすることからあなた(の意識)を連れ戻し、並外れて賢明な状態へと置き直すでしょう。あなたがどのラインに焦点を合わせようとも、AQALの枠組みは、きっと少なくとも、あなた自身の内面と、あなたが遭遇する人みんなの内面の全てに気づいている状態に、あなたを連れて行くのです。
 すべての単独で有用なラインであなたが飛びぬけて発達する(hyper-developed)ことを、ILPは要求も(推奨さえも)しません。ある種の意識の10種競技選手のように、あるいは発達面での何でも屋のように。あなたが望むなら、あなたはレベルとラインの10種競技選手になれるでしょう。しかし、あなたにはおそらく時間がないはずです。ILPを持つことは確かに要求されません。あなたは発達の全てのラインを習得する必要もありません。ただそれらに気づけばよいのです。この気づきそのものがあなたの人生のバランスを取る力を引き出します。なぜならあなたは自然にあなたの強みを梃子にして、弱みを埋め合わせるように、あなたの振る舞いを適合しはじめるでしょう。例えば、あなたはいくらかバランスを矯正するためにプラックティスを加えたり減らしたりできます。AQALの枠組み−それはまさにあなたの領土の地図−を理解することによって、あなたの自己認識は自然に成長し深まるでしょう。その結果、あなたは個人的な生活、仕事、世界への貢献において、よりよい意思決定をおこなうことができるのです。(拙訳ここまで)


5つの重要なラインとは、Cognitive, Moral, Emotional, Interpersonal, Spiritualです。P84には犯罪の天才(Cognitiveが突出して高く、他の4つは極端に低い)、環境活動家(CognitiveとMoralが相当に高く、他の3つは平均的)、保守派の政治家(Interpersonalは相当に高いがSpiritualは低く、他の3つは平均的)、Kosmocentric Artist(EmotionalとInterpersonalは平均的だが他の3つは相当に高い)という4つのサイコグラフの例が取り上げられています。
 自分を考えてみると面白いですし、仕事上のパートナーがどんなサイコグラフの形をしているのかも想像できそうです。どのような組み合わせなら、どんな成果が出せそうかも検討できるかもしれません。統合的なサイコグラフ、参考にしたいものです。