ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーを中心に、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、複雑系や脳科学的なアプローチも加味し、「生命の躍動」の探求、心理哲学的な関心について綴っています。苦悩を乗り越えるヒント、自己実現、自己超越を促す一助となれば幸いです。

2009-01-01から1年間の記事一覧

攪乱者 disturbance

前回に引き続きILPのシャドウ・モジュールをみていきたいと思います。今回のタイトルは攪乱者としました。Disturbanceの訳としてそう表現したのです。以下に紹介するように、この3-2-1 Shadow Processではdisturb(動詞)あるいはdisturbance(名詞)という…

抑圧と影

今回はILPのシャドウ・モジュールから読み進めていくうちに気づいた点をいくつか取り上げたいと思います。 最初に、影とは何か?これについてILPの本文ではこのような説明がされています。 「シャドウ」という用語は、心の「暗い側」に関係しています。―…

明け渡し Surrender

木漏れ日の 浮かぶ水面で 明け渡し 15年ほど前、夏には、よく大学の裏山の小さな渓流に子どもをつれて出かけました。 4mほどの深さの滝つぼの周辺では、泳ぐこともできましたので、滝つぼに飛び込んだり、潜ったりしたものでした。 一番好きなことは、水面…

曇りなき、眼で見定める Suchness

「起こるがまま」と「あるがまま」に思いを巡らせていて、ふっと気づいたのですが、あるがままSuchness(真如)とは、「曇りなき眼(まなこ)で見る」ことと共通するものがあるのではないでしょうか。 「曇りなき眼で見定め、決める」とは、宮崎駿映画の「も…

見られるものは見るものではない、そして自由

見られるものは、見るものではない 最初にこの文を読んだときは、正直言ってどういう意味かよく分かりませんでした。 しかし、主体、客体という言葉に代えて読んでみると分かるようになりました。 見られる客体は、見る主体ではない さらに客体を対象という…

4つのS 微細の熟達

今回は「4つのS」について書いてみたいと思います。この「4つのS」という表現は、私のオリジナルです。それはSituation but States by Subtle, then Stageです。文章にするとWe can manage not Situation but States by Subtle, then Stage.となります。…

スピリットの3つの顔 The 3 Face of Spirit

今回はMeditation Practiceの4つめであるThe 3 Face of Spiritを取り上げたいと思います。 スピリットの3つの顔とは、3人称のスピリット、2人称のスピリット、そして1人称のスピリットを指します。邦訳「インテグラル・スピリチュアリティ」では『第7章「私…

心身統合とSubtleエネルギー

ILPのボディモジュールの中のSubtle Body Practicesという節を読み終えました。172〜190ページまでかなりの枚数が割かれていました。このsubtleボディ、subtleエネルギーの実践に関する記述は、従来のウィルバーの著書ではあまり見られない貴重なものでした。…

非視点的狂気

10年前に私自身が陥っていた非視点的狂気とは何であったか?もう一度少し整理をしてみたくて「進化の構造」と「万物の歴史」からいくつか関連した文章を抜粋してみました。 以下「進化の構造」より抜粋 P308「緑の運動」は本質的にマルキシズムと同じ欠陥を…

Integral Inquiry 統合的な問い

ILPのスピリット・モジュールではMeditation Practicesとして5つの瞑想が紹介されていますが、今回はその3つ目、Integral Inquiry「統合的な問い」を取り上げたいと思います。 まず、1分間モジュールから、それは以下のようになっています。(以下、拙訳) 1…

沈まぬ太陽と目撃者

山崎豊子原作、映画「沈まぬ太陽」を観て来ました。 そして「沈まぬ太陽」とは目撃者(Witness)ではないかと強く感じました。 恩地が、最初は左遷され、否応なく赴任したアフリカの大地ですが、 最後にはそこに強く惹かれる自分を認識します。 それは過酷な…

Statesを管理する

実際のILPの実践は、ILP Blueprint という計画を左の表として作成し、ILP Weekly Tracking Logという一週間の実践結果を右の表として記録するという形を取ります。 私も年内は試行期間という気持ちで気軽に青写真を作って実践を始めました。計画する項目の中…

I AMマントラ瞑想

このI AMマントラ瞑想はILPの中で以下のような解説で始まります。 このガイド付き瞑想は、あなたを目撃者意識(witness consciousness)の中心に連れて行きます。あなたの生来の気づき(native awareness)、存在としてのシンプルな感覚(simple feeling of …

深い夢見のない眠りの中に現前するもの

Subtle Energyが意思的な心と肉体的な身体の間のミッシング・リンク(失われた輪)であるのに対し、Causal Bodyとは何であったか?目撃者(Witness)との関係は?などを知りたくて、ILPのボディ・モジュールの章の最後に出てくるResting in the Causal Body…

Meditation Practiceその1 呼吸瞑想

ILPのスピリット・モジュールではMeditation Practicesとして5つの瞑想が紹介されています。そこではまず以下の書き出しから始まり、簡単に5つの瞑想が示された後、各々の瞑想が詳しく示されています。今回はその書き出しの部分とすべての瞑想の基礎ともいえ…

Additional Modules

Integral Life Practiceの第9章を読み始めました。タイトルは次のようになっています。 Living Your Life as Practice Relationships, Work, Parenting, Creativity, And Other Additional Modules コア・モジュールがIndividualであるのに対し、アディショ…

原理主義者とニューエイジは前合理的

Integral Visionの第5章でA Pre-Rational Mythic God and a Trans-Rational Unitive Spirit という節があり、前合理的、合理的、超合理的という段階において、超合理的は、前合理的と同様に非合理的であるとして同一視されてしまう「前/超の錯誤」について…

見性と悟り

ウィルバーのIntegral Life Practiceのスピリットモジュールの中に、実践と見性、そして悟りの関係が説明されている節がありました。状態(state)としての見性、段階(stage)としての悟り、という捉え方で分かりやすかったです。P205のCan you feel it?か…

ネガティブな感覚を気づきのサインとして役立てる

「気になること」などがあると、考えていないつもりでも、そのことが無意識に心の一定の容積を占めていることがあります。そんな時は、どこか緊張したり、少し胸がしめつけられたり、自己収縮のネガティブな感覚があります。 一般的な反応もしくは対応として…

おくりびと(統合的倫理3)

先日、「おくりびと」を見ました。以前に、映画館で見たので今回が2回目です。映画館で見たとき以上に涙が出ました。たいへん良かった気がします。見ていたときに気づいたのですが、この映画は、世界観としてはアンバーvsターコイズが描かれており、AQALとし…

道徳的認識力は勇気をもって高める能力(統合的な倫理2)

ウィルバーのILPの「統合的な倫理」の章を読み進めていくなかで、重要なことを3点ほど整理したいと思いました。統合的倫理の基本理念、3種の価値、統合的倫理のAQALの3項目です。 まず、統合的倫理の基本理念ですが、これはp261にThe Basic Moral Intuiti…

統合的な倫理 その1

ウィルバーを読み始めて、そして特にこのIntegral Life Practiceを読み始めてから人生の謎がどんどん解かれていく感じがしています。一昨日から昨日にかけて自分に起こったことと、第8章の「Integral Ethics統合的な倫理」を訳しはじめたことが相まって、ま…

出身地の言葉で話しかける Integral Communication

ILPのマインド・モジュールの終盤でIntegral Communicationについて書かれた節What Perspective Are You Coming From?(p113)があります。大変重要なことが記されていると思いましたので要点を紹介させていただきます。(以下引用、拙訳) 多様性内統一(un…

Integral Medicine

おしゃれでカラフルなCDジャケットのようなウィルバーの本Integral VisionにIntegral Medicineの記述がありましたので紹介します。(以下拙訳) 医療ほど、早速に応用できるIntegralモデルはどこにもありません。そして世界中のヘルスケアの実践者によってま…

グリーンを超えて

「グリーンを超えて」は私がブログを書き始めた当初のスローガンのひとつです。私はケン・ウィルバーを読んでそれまでグリーンに重心をおいていた自分を客体として眺めることができるようになりました。自分と同じようにフラットランドで迷子になっている人…

発達とは人類の進化を辿ること

前回は、いくつかの発達ラインを見てきましたが、そのなかでも格別に役に立つラインとして取り上げられているのがWorldview世界観のラインです。世界観のスペクトルの節(ウィルバーのIntegral Life Practice p90-)では次のように解説されています。(以下…

Integral Psychograph 統合的なサイコグラフ

ウィルバーのいう発達ラインについては、インテグラル・スピリチュアリティの中でいくらか解説されていますが、Integral Life Practiceではそれを5つの主要なラインに絞って、縦軸に3つのレベルを示し、ラインを棒グラフで表示したものをIntegral Psychograp…

奥深く絡み合う四象限 Profoundly intermeshed AQAL

ウィルバーのIntegral Life Practice のLevels of Consciousness の節のなかのP77に興味深い文章がありましたので紹介させていただきたいと思います。(以下、拙訳) これは私たちの個人的進化にとって何を意味するかというと、私たちは意図的に、意識と慈悲…

すべてのQuadrantsに気づく

ウィルバーのIntegral Life Practiceの5章The Mind ModuleのなかのQuadrantsの節を読んでいて、気づきました。 Eckhart Tolleの「Inner Bodyを意識する」をきっかけにして、「気づきを四象限すべてに、すばやく広げれば良い」のだと。 以下、Quadrantsの節か…

フロイトの「それがあったところに、私はいるべきである」

前回、瞑想は影の解消に役立たないと書きましたが、なぜそうなのか?をもう一度おさらいしてみたいと思います。 まず、健全な超越とは何か?インテグラル・スピリチュアリティ第6章で訳者の松永さんが分かりやすい解説を挿入してくれています。 健全な超越と…