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ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

「無意識の回避」から「意識的な受容」へ

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ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)の勉強を進めていて、あらためて思うのは、まず、われわれはネガティブな状況や出来事、そしてそれに反応する内面の現象を、無意識に避けようとする傾向があるということだ。

しかしそうではなく受け容れねばならない。そしてその受け容れ方は、「ただじっと我慢する」ようなものではなく、「甘んじて受け入れる」ようなものでもなく、自分の内外に何が起こっているのかを「しっかり自覚して受け容れ」なければならない。それが正しいAcceptanceの姿勢なのではないかと思う。

回避すればするほど苦痛は苦悩に変わり増幅される、ということに関して前回のブログで触れた。そのような苦痛の増幅を招かないために「あるがまま」を受け容れることが大切なわけだが、これは何の努力もしないということでは全くない。むしろ練習、練習、そして練習が要求される。

では具体的にどうするかというと、ACTではそのひとつの方法として内面の現象をカテゴリーに分類するというものがある。カテゴリーとは思考、感情、感覚、衝動、評価そして記憶などだ。

私はいま~と考えて(思考して)いた。私に~という感情が湧き起っている。私は胸に~という感覚を感じる。私は今~という衝動にかられている。私はそのことについて~という評価を下した。というように自分の内面に起こっていることの自覚を保つようにする。

この時、思考、感情、感覚、衝動、評価などは見られるモノ(対象)となる。見ているのは「観察者としての自己」だ。

思考から何かを見るのではなく、思考そのものを見る
Look at thought, rather than from thought.


と書かれている(「ACTをはじめる」P90)。

これはマインドフルネスだ。ACTにはマインドフルネスが組み込まれている。ACTのマインドフルネスはこれまで取り上げてきたティクナットハンのいうマインドフルネスと大きな違いはない。そのような内面の出来事に注意を向け、観察するのだ。それを変えようとすることなく、それに抵抗することなく。もしそれにイライラするなら、そのイライラに対してさらに気づきを入れる。

冷淡に観察するのではなく、優しく温かく包みこむ。慈しむように。

具体的なイメージはこうだ。思考、感情、感覚、衝動、評価はマインドのおしゃべりであり、漫画でよく描かれる「吹き出し」のようなものだ。この「吹き出し」のイメージを私は「風船モデル」と呼んでいる。

何かマインドがしゃべりはじめると風船が膨らみ、その中に吹き出しのようにことばが書きこまれる。カタカタと文字が刻まれるイメージだ。その風船を外から「ああ、思考の風船がいま膨らんだ」と気づきを入れれば良い。

ネガティブな感情の風船があるにもかかわらず、それにフタをして見ないふりをしているため、その中にことばが刻まれないのが「抑圧」だ。風船を見えないよう脇に追いやって視界から遠ざけてしまうのが「周縁化」だろう。抑圧と周縁化はともに回避の形である。

次に、こうした「観察者としての自己」によって、見られるもの(対象)に「タグ」をつけて行こう(ACTのテキストではラベルを貼ることが推奨されている)。

マインドのおしゃべりに「お~とっと」と気づき、思考というタグをつけよう。
ある風船には感情というタグをつけ無視するのではなくしっかり観察しよう。
ある風船には感覚というタグを結び付けておこう。
ある風船には衝動というタグをつけて見守ろう。
ある風船には評価というタグをつけることで出来事と切り分けよう。
(出来事から評価を切り分けることを「脱フュージョン」という、詳細は次回)。

このように内面で生起することに「吹き出し」+「カテゴリー」のタグを付ける。これがAcceptance。

そしてその風船を無理に押さえ付けるのではなく、割ろうとするのでもなく、追いやろうとするのでもなく、握りしめるのでもない。

タグをつけたら風船から静かに手を離そう。そう、手放す。これがLetting Goだ。「意識的に受け容れる」とはこういう一連のプロセスなのではないだろうか。

「無意識の回避」から「意識的な受容」へ


「無意識の回避」が観念の世界を彷徨っているのに対し、「意識的な受容」とは、明晰な「今ここ」の意識の青空に軸足を置いて、生起する風船を認め、手放すことだと思う。