ウィルバー哲学に思う

「統合」の哲人ケン・ウィルバーにはじまり、仏教心理学的視点を取り入れたマインドフルネス、第三世代の認知行動療法ACT、そして近年ブームのアドラーまで、脳科学的なアプローチも加味し、心理哲学的な関心について綴っています。

思考から莫大な量の意識を解放する

エックハルト・トールのいう5つのポータルとは、Now、Surrender「明け渡し」、Space、Silence、Inner Bodyであることは前に取り上げた。

5つのポータル - ウィルバー哲学に思う


しかし、The Power of Nowをよく読んでみるとcessation of thinking「思考を停止すること」もそのひとつであると書かれている。

まあ、これは独立した一つのやり方というより、他のポータルの原因あるいは結果ともなる項目といえるかもしれない。

Nowに強烈に在れば、思考は停止するし、Spaceに注意を向けたり、耳を澄ませてSilenceを感じたりしようとすれば自ずと思考は停止するからだ。

またウィルバーのいうようにすばらしい絵画など芸術作品にくぎ付けになったときも思考は停止する。

私としては、後ろ向きに歩くと思考は停止するし、岩を登っているときも思考は停止する。


ふだん我われは本当に思考にとらわれている。

寝ているときも何か頭がしゃべっているくらいだ。

思考が「苦痛を苦悩へと増幅する」ことはACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で詳しく解説されている通りだ。

枡野俊明さんは「心配事の9割は起こらない」と述べられている。ということは、我われは実際に起こるネガティブな事のじつに10倍を、心配事として不安な感情と共に思考しているのだ。

思考を停止すると風が入ってくる。

それが、思考から解放された意識の風なのだと思う。

その風の入ってくる感覚を、自分の感覚として覚えておくことが大切だ。

そうそう、この感じ・・・というように。その感じに続いて安らぎがある。

その感じに続いて、鋭敏さがある。

トールのいうrelax & alert だ。

マインドフルネスを実践して習得すべきはこの感覚なのだ。

そして、調子の悪い時、ネガティブな感情に襲われた時、思考にとらわれている時、

このことを「お~とっと」と気づいて、呼吸をひとつ。そして切り替えるのだ。

この切り替えには、エックハルト・トールのいうインナーボディに意識を向けることが効果的だ。インテグラル・ライフ・プラックティス(ILP)では、subtleの実践である。

私などは、クッと呼吸を吐く。丹田が凹ように。

そうすると自然に深い息が入ってきて、独特の感覚が広がる。

ありがたい、という気持ちが生じる。


思考にとらわれる、特に、「概念としての自己」をネガティブに強化してしまうような思考にとらわれるのが最もよくないのだと思う。

そのような時は、まず自分がやっていることに、気づく。

自分が今やっていることは、「概念としての自己」を強化するというまったく無意味なことであることに、気づく。

そして、今を別の在り方で、過ごすことができることを認識し、別の在り方を「選択」する。

それに使えるのが5つのポータル、そして「思考を止める」という6つ目のポータルなのだろう。

そしてトールのいうように、思考から莫大な量の意識を解放する、のだ。

意識を無益で脅迫的な思考に投資するのは、もう止めようと思う。